原発「グリーン認定」の波紋と今後

 今回は関電の続き②大飯原発をお届けする積りでしたが、表題の件が気になるので予定を変更させて頂きます。
 原子力発電が「クリーン(きれいな)エネルギーだ」という宣伝は、日本に原子力発電所が林立しだした1970年代からありまして、「原発は生活を豊かにするエネルギーだ」というバラ色の夢がばら撒かれました。
 なるほど原発は無色・無臭、いかにもクリーンな感じの仮面を被っていますが、福島の大災害を持ち出すまでもなく有害なものでした。3・11以後は魔性の部分が露わになったにも関わらず、一部は再稼動を始め、新増設さえ計画されだしたのです。そうしたところへ起こったのが「グリーン」の問題でした。
 欧州連合(EU)の行政組織である欧州委員会(欧州委と略す)は、従来からの意見を纏めて今年の1月、原発と天然ガスのグリーン認定方針を発表していますが、それが進捗してきたのです。
 ベルギーの首都ブリュッセル発の共同通信が今月のはじめに伝えたところによりますと、今年2022年2月2日、前述の欧州委員会は原発と天然ガスを、地球温暖化抑制につながるグリーンな投資先として、条件付きで認定する最終方針をEU内の各国に正式に提案しました。従来からの提案内容と比べて大きな違いはありませんが、この提案が通ると原発は、クリーンでなくてもグリーンなエナージィ(エネルギー)として再認識されるかもしれません。
 ところで、いろいろな「グリーン」が出てきましたが、これらは、いったいどんな意味なのでしょうか?
 すぐ脳裡に浮かんでくるのは、1980年に結成されたドイツの環境政党「緑の党」のようです。ドイツ語では「緑の人々」という意味で Die Grünen と書きますが、議員は2年すると辞任して後任に譲るという戒律を守っております。これなら独裁も忖度も起こらないでしょう。環境政党はベルギーにもあります。この国にはEUやNATO本部がありますが、北部フランドル地方はオランダ語圏、南部ワロン地方はフランス語圏、東部地方はドイツ語圏と分れています。オランダ語圏に基盤を持つ「フルン」(オランダ語でGroen は「綠」の意)が環境政党です。これらに使われているグリーン(緑)には、「モラルに厳しい」という意味もありますが、「環境に配慮した」とか「環境に優しい」という感じで使われているようです。これで大体の感じが掴めたようなので本題に戻りましょう。
 欧州委の提案に対し脱原発を旗印にしたドイツなどは、「法的措置も検討する」と反対しています。原発がグリーン認定されると原発事業に資金を呼び易くなり、原発推進派が勢力を盛り返す可能性が大きくなるからです。
 これまでバイオ燃料などがグリーン認定されているものの、原発と天然ガスは各国の意見が纏まらず、決定は先送りされてきました。ドイツは「緑の党」所属のレムケ環境相が「原発は持続可能ではなく、リスクが高い」と対決、オーストリアのゲウエッスラー環境相は天然ガスも含めて反対し、ルクセンブルクもこれに追随する模様です。
 他方、EUのマクギネス欧州委員は、2050年のカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)達成のためには全手段を用いねばならぬ、と強調しました。欧州委は2023年の法制化をめざしており、欧州議会の過半数またはEU加盟国27ヵ国のうち20ヵ国が反対すれば廃案となりますが、20ヵ国が反対する可能性は極めて低く、705議席の欧州議会の過半数が提案を否決することもないだろうと、欧州のメディアは考えているようです。
 つまり原発容認の逆戻りが、ヨーロッパで起ころうとしているのです。すでにフランスのマクロン大統領は昨年の秋、「脱炭素のため原発建設を再び推進する」と表明しました。ブルガリアやフィンランドも、カーボンニュートラルの目的達成のためには原発が不可欠、と主張しています。この背景には、燃料価格の高騰による電気料金値上げの問題もあるでしょう。それに加えてウクライナ情勢が緊迫の度を高め、ロシアからの天然ガス輸入も不安になってきました。あれやこれやでEUが原発回帰すれば、これが世界の潮流に大きく影響するのは間違いありません。
 もともと原発擁護派の日本政府が、これを機に原発推進を明確にするのは火を見るよりも明らかです。しかしCo₂ 削減の大義のため、原発依存社会へ戻るのは許されるべきことではないでしょう。
 ヒロシマ・ナガサキ、そしてフクシマという負の遺産を担う日本こそ、「原発 ノー!」と世界に訴えるべきだと思うのです。

  原発にグリーンなる語を付すなかれ牙をむく日の来るを知らずに
  クリーンにてグリーンなりしか原発の認定するや逆のイメージ
  気安げに使うなグリーンの投資先その後に待つは廃墟の世界
                    (20222月24日)

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