第6回 新しい時代とは。忘れないで、思いやりの心

 最近ことあるごとに叫ばれる。新しい時代って。何か。
 昨年4月7日に東京、神奈川、埼玉など七都府県に最初に出されて以降、繰り返し全国各地で出されてきた新型コロナウイルスの感染化拡大に伴う緊急事態宣言が全面解除され皆さん、誰もがホッとされたのでは。時を同じくして岸田文雄第百代首相(自民党総裁)が誕生、所信表明で強調した「成長」と「分配」の好循環に重点をおいた、かつての池田勇人元首相による所得倍増計画の再現を思わせる日本社会も動き始め、新たな国会議員も決まりました。長い間、これでもかと続いたコロナ禍という呪縛から解き放たれた時でもあります。ならば、最近よく言われる【新時代】について考えてみたい。

 新しい時代といえば、私たち人類共通の課題で前回も触れた脱炭素化社会実現への加速化が何よりも最初に浮かびます。でも、それだけではありません。コロナ禍に翻弄され続けた私たちは緊急事態宣言の間中、マスクの着用をはじめ、会議や催し、旅行などを控え、初体験のステイホームによるテレワークで自宅勤務を続け、遠出を避けてのオンライン会議、お酒をやめての夜の飲食制限、テイクアウトなど。社会そのものが、これまでとは一変。私たちはこうした思いもしなかった生活に二年近く耐え、気がついた時には社会の全ての生活、しくみが一変してしまっていたことも事実です。
 幸いコロナ禍は収束直前の段階にまできました。でも、今度は元の生活自体が異次元に映るのも事実です。では、どうしたら良いのか。身近でいえば中日ドラゴンズの与田剛監督から立浪和義新監督へのバトンタッチ、日本ハム新庄剛志監督の登場、平成の怪物松坂大輔投手の引退、米大リーグ大谷翔平の活躍、大相撲の横綱白鵬の引退などもファンにとっては新時代到来なのですが。テレワークなど異次元社会になれてしまったというのも事実。ここは、コロナ禍の社会で得た新しい財産をこの先どう生かすか。そのことこそ大切です。

 私はつい最近、妻を亡くし涙があふれて止まりませんでした。入院中の付き添いは私一人に制限され、家族は臨終の汀になっても病室に入ることが出来ず、息子たちとはやむなく病室と自宅、ホテルの一室をオンラインで結び妻を励まし続けました。「おかあさん」の呼びかけに微かにうなづく姿を目の前に「これも新時代か」と涙があふれました。彼女は生前「あのね。台風のエネルギー、そのまま電気には出来ないの。そうすれば危険な原発だって必要なくなるじゃないの」と繰り返し科学者の息子に言っていました。
 聴けば、そんな研究開発も始まったようです。プラスチックなどゴミの量をたとえ少しでも減らし地球温暖化、気候変動の解消と環境保全に役立てていく。出来ることから始める。持続可能な、誰もが幸せな社会にするには私たち一人ひとりの心構えも大切です。そしてもうひとつ。「何よりも人が人を思う豊かな心こそ大切なのよ」。亡き妻の、あの声が大きく耳に迫ります。(2021/11/1)

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