げんしのし31
森川 雅美
もっともっと光の沸点まで近づいていく体の先端へと、吊るされる歪んだ多くの地図を抜けていく残る者達の、忘れかけた悲しみの泡立つ底知れぬ亀裂の暗い奥底も、覗かれている小さな掌の辿る傷となる灯される狭間と、引き寄せる飛翔のため揺れる水音を孕む溶ける段差の、ありがとうと帰って来る単純な声のごく微かな震えも、弱る掌の狭間に落ちるもはや許されない身体の起伏と、日没の山際に残る微かな輝きに囁かれる細胞の中核の、膨らむ傷口の方角に流れる薄らと靄のかかる思い出も、窶れる骨の奥まで汚れる空に放つ痺れる手足の表面と、もっともっと光の尻尾まで解れていく体のより先端の、包む地面に残る幾つもの痕跡を辿りつつ霧散する頤も、燃やされる静かな午後に次つぎ溶解する営みの時間と、点点と記す感覚のため柔らかい手つきで摘まむ瘡蓋の、均された方角に投げる実らない果実を握る窪みの手も、おかえりなさいと突然切れる深い切断のさらに先へと、離す痛みを伴う感触から底部へうつろう丘陵の片側の、濁りの深みに躓く狭間の踵に伸びるいつかの温もりも、少しずつ擦り切れる陽射しへ蠢く小さな叫びの粘膜と、限りなく溶解する日常の窪みに突き出す微かな色彩の、もっともっと光の段差まで積み重ねていく体の先端も、薄ぺらくなる視線の空白へと注がれる弛緩する地形と、記憶にわずかに残る笑う口元の透けていく緩い傾斜の、途中で振り返る記憶の最中に拡がる小さな影の囁きも、