文士刮目 第21回 心を壊さないで! 「希望」という名の道を歩こう

 連続強盗に指示役「ルフィ」。防犯カメラ室内の画面破壊。強盗傷害容疑で新たに逮捕。119番最多103万件(東京消防庁22年)。救急車横転。千葉・強盗傷害容疑、関東で強盗多発。アプリで職場把握か。博多刺殺。東京強殺、携帯に犯行計画。自衛官が関与、グループが連続強盗か――など。これらは、ことしに入ってからの新聞各紙を躍らせた活字の一端です。私たちの身の周りで、こんなにも多くの凶悪事件が続発しているとは。信じられません。
 実際、新年に入り、東京都狛江市で90歳の女性が両手を縛られたあげく、あばら骨も折られ殺害された強盗殺人事件をはじめ関東、広島……と何千万円単位の現金が集団で強奪される事件が多発、ほかに保育現場では保母が園児の頬を殴ったり、宙づりにするなど年明け早々から、全国各地で醜く、いまわしい事件が多発。マスコミ各社を騒がせています。なぜ、こんなに酷い事件が続発するのでしょうか。

 私には貴重な命の火が次から次へと地球規模で失われていく新型コロナウイルスによるコロナ禍という時代が背景にあるから、とそんな気がしてなりません。人々にとって一番大切な心が病んでいる。いや、確実に棘をはらんで血が噴き出してきた。そんな気がしてならないのです。東京消防庁管内では17時間休みなしの救急車の運転手が眠気に襲われ、横転。救急業務の体制を見直すといった事態まで起きました。一体全体、この世の中はどうなってしまうのか。感染の拡大化がなかなか治まらない日本。そこに追い討ちをかけての物価高、さらにはドイツによる主力戦車「レオバルト2」のウクライナへの供与など泥沼化への道を歩むロシア×ウクライナ戦争など。日本ばかりか世界中の人々の心が病み、疲弊し、止めようのないものになってきています。このままだと誰もが最も恐れる核兵器の使用だってありえます。

 こうしたなか、中国はと言えば、です。新型コロナウイルスを徹底して抑え込む「ゼロコロナ」政策の終了を一方的に宣言して行動制限のない春節(旧正月)連休を強行。大型連休中に国内を移動する人となると、21億人に及ぶと言われ、ぶり返しによるコロナ禍拡大が心配されています。こんな世界の現状を見るにつけ私には、どこもかしこも、この地上に生きる人間たちが、もはや破れかぶれになって生きている。そんな気がしてならないのです。でも、愚かな心の破滅化はどの国であろうと絶対に防がねばなりません。
 話は変わりますが、人間社会全体がこうした危篤状態にあるなか、世界平和のためにも生きていてほしかった作家加賀乙彦さんが1月12日に老衰で亡くなりました。93歳でした。精神科医でもあった加賀さんは私たち「脱原発社会をめざす文学者の会」の代表かつリーダーでもあっただけに、残念です。作家として、精神科医としての活動が希有な存在だった加賀さんは平和な国ニッポンにとって掛け替えのない大きな大木のような存在で、東日本大震災の被災地を仲間と共に一歩一歩、踏みしめるように歩かれた、あの真摯な姿が忘れられません。今は残念で仕方がありません。でも、悲しさを乗りこえ、ここはご冥福を祈り、平和な世界の実現に向かって残された私たち全員が一歩、一歩確実な歩みをしていくほかありません。

 今。この人間社会はいろいろと不幸が重なっています。でも、こうした中、救われたのは新春恒例の皇室行事「歌会始の儀=ことしのお題は「友」=」で披露された天皇、皇后両陛下の歌【コロナ禍に友と楽器を奏でうる喜び語る生徒らの笑み(天皇陛下)】【皇室に君と歩みし半生を見守りくれし親しき友ら(皇后雅子さま)】です。そして、もうひとつ。先日新聞でも報道された戦禍の母国への思いを俳句で詠むウクライナ人の有志13人による句集出版への取り組みではないでしょうか。この世に住む全ての人々が、苦しい山を一つひとつ乗りこえ、幸せな人生を過ごせれば。何よりですね。
 平和を求めて歩いてゆけば、そこには、きっと。希望という名の光りもあるはずです。

(2023年/02/01)

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