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書名:『ソトゴト フクロウが目覚めるとき』
著者:森 詠
版元:祥伝社文庫、本体価格900円+税
発行日:2021年11月20日
ジャンル:長編小説
内容: 本書は問題意識を感じさせるハードボイル的ミステリであり、公安刑事猪狩誠人巡査部長が6年前の殺人事件の再調査をする警察小説です。この時代背景には、新型コロナウイルスのパンデミックがあり、政府は名だけの「復興五輪」を唱えてオリンピック・パラリンピックを強行しようとしていたごく近い過去の出来事です。そのプロットとして大きく目に入ってくるのは原発問題、それも柏崎刈羽原発の爆破事件を目論む勢力の暗躍に韓国・北朝鮮が絡み、首相官邸も震駭する国際スパイ小説でもあります。このように書いてきますと、いかにもエンタメ的ですが、難解な小説だけが文学ではないでしょう。著者ご自身は原発文学を目指したものではないかもしれませんが、思わずページを捲らす面白さの中に原発問題を訴えるのも、文学の効用ではないでしょうか。あえて脱原発社会をめざす文学者の会の大賞に推薦する次第です。 推薦者 天瀬裕康