α:第7次エネルギー基本計画が2月18日に閣議決定されたね。
β:このあいだ話した通りの中身で、何も変わってない。意見募集では4万件を超える実に多様な意見が寄せられたけど、資源エネルギー庁は「パブリックコメントの結果について」で「パブリックコメントの結果を踏まえても、2024年末審議会でお示しした政府案の大きな方向性が変わることはないと考えています」として、審議会を開いて議論することをしなかった。勝手に一部の手直しをしてほぼ原案通りに決定したんだ。「原子力の安全性やバックエンドの進捗に関する懸念の声がある」との記述が2ヵ所加えられたのは、それだけ懸念の声が多くあったということだろう。
γ:「可能な限り原発依存度を低減する」との記載が削除された。「パブリックコメントの結果について」では、こう言い訳をしている。「第6次エネルギー基本計画では、『可能な限り原発依存度を低減する』ということと、『必要な規模は持続的に活用する』ということを記載していました。これは、原発依存度が震災前の約3割から下がり、一方で必要な原発は活用していく、という趣旨であり、この考えは、エネルギー基本計画(案)においても変わりません」。変わりなくても削りたかったんだよね。第6次では削れなかった悲願が第7次で達成されたわけだ。
β:「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用していくことが極めて重要となる」んだそうだ。とは言うものの「関連資料」として付された「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」によると、発電電力量に占める比率では、再生可能エネルギーは4~5割程度。そんな程度なら既に現実化している国も多く、20年遅れの指摘がある。
α:どこが最大限だ! って思うよね。
γ:原発については2割程度で、こちらは逆に実現困難な高い割合と見られている。これも「パブリックコメントの結果について」は、がんばって「ご意見に対する考え方」を書き連ねてるけど。「原子力発電比率2割という水準は、原子力規制委員会により新規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働や、安全性確保を大前提とした定期検査の効率化や運転サイクルの長期化等により設備利用率を向上させること、次世代革新炉の開発・設置等、様々な取組によって、達成可能な水準と考えています」ってね。
α:でも、再稼働もそんなに進みそうもないし。
β:設備利用率の向上だって、いままでできてこなかった。
γ:それもこれも原子力規制委員会が悪いんだというのが原子力ムラの見方だ。以前に紹介した『エネルギーフォーラム』24年8月号で「規制委が『安全性だけを判断する』のなら、経産相に運転許可証(ライセンス)を持たせるべきではないですか」(奈良林直東京工業大学特任教授)とか「電気事業法を改正し、稼働命令権限を持たせるべきでしょう」(石川和男社会保障経済研究所代表)とかトンデモ発言をしてたけど、そうでもしなけりゃ原子力発電比率2割の達成なんてできっこない。
それはさすがに無茶だよねと思っていたら同誌25年3月号の特集は「原子力規制委の治外法権 国益を無視した独善と不合理」。金沢祐奈記者が「12年半の間、規制委は変わらなくとも、時代は変わった」と大見得を切っていて、「『規制の適正化に向けて動く好機だ』。取材に応じた学識者や電力関係者の多くは異口同音にこう語る」らしい。
α:それは、やっぱり無茶だと信じたいね。第8次のエネルギー基本計画には「規制の適正化」が盛り込まれましたなんてことには、なってほしくない。
β:いまのところ「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね」と言ってるけど。
γ:「次世代革新炉の開発・設置等」も、実現には大きな壁がある。「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替え」が新たに認められたものの、「重要なのは、本当に採算がとれる支援制度が出てくるかだ」という関西電力幹部の言葉が、2月19日付朝日新聞に載っていた。第7次計画では、第6次同様、具体的な支援制度は明示できずにいる。これも無茶をやらなきゃ現実のものとはならない。原子力発電比率2割の達成は、やっぱり夢物語だろう。
α:しかし、そこに近づけてはいけない。
γ:そうだね。しっかり止めていこう。
バックエンドの進捗に懸念の声が多かった六ヶ所再処理工場の問題にも触れておきたい。 『ENERGY for the FUTURE』24年4号で、更田豊志前原子力規制委員会委員長の発言が目についたんだ。いわく「全ての燃料を再処理するのだという、いまの政策が果たして時代に適っているか、そこはしっかりと議論すべきです」。更田前委員長は、まずは再処理工場の運転に待ったをと切実に願っているようだ。「東海再処理工場で実際に起きたことですが、高レベル廃液にしてしまってから、ガラス固化体にするのにいま非常に苦労しています。切断前の状態であれば、中間貯蔵はつづくわけですし、議論の流れによっては直接処分もあり得るわけですが、切断してしまった後、ないしは高レベル廃液にしてしまった後はガラス固化にしか向かう道がないわけです。東海再処理工場で起きたことが、また再び六ヶ所再処理工場で起きることだけは勘弁してくれと思います」。
ナショナルピーアールが発行する掲載誌は、電力業界のPR誌だ。そこに政府の「基本的方針」に異を唱える発言が載っている。業界の本音が透けて見える。
α:あらゆる意味で無理無駄な、破綻した問題の先送りをいつまで続けるつもりなんだろう、ってこれ前回も言ったっけ。
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