コロナ禍にロシアのウクライナへの軍事侵攻。円安。石油、野菜など諸物価高騰。食糧不足。そこへきて、このところの酷暑続き。何もかもが厳しい時代に今は人々の心を突く言葉や音楽が見直されています。言葉で思い出すのが戦後まもなく飛び出した【貧乏人は麦を食え】発言です。「所得の少ない人は麦を多く食う、多い人は米を食う、という経済の原則にそったほうへ持っていきたい」。今は昔、池田勇人元首相の蔵相時代の国会答弁です。そして。私が自らに言い聞かせているのは都々逸の【ボウフラが 人を刺すよな 蚊になるまでは 泥水飲み飲み 浮き沈み】か。
言葉といえば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を退職した宇宙飛行士野口聡一さんが東京都内で共同通信のインタビューに「宇宙は基本的には死の世界。生きていることは奇跡だ」と語り、3回の飛行体験を含む四半世紀のキャリアを振り返り「手を離せば無の世界に行ってしまう」とも。野口さんは2021年3月、国際宇宙ステーション(ISS)での船外活動に触れ、こうも語っています。
【眼下の地球はこうこうと輝き、握った手すりは太陽の光で熱を帯びていた。目の前の宇宙は「360度、光が来ない何もない景色」。星すら見えない暗闇に、恐怖を覚えた。だが、まばゆい輝きのISSと地球があった。仲間の飛行士がいて、パソコンなど文明の機器であふれる基地。海や雲が移り変わり、多彩な表情を見せる水の惑星。「命がある証しだ」】とも続けました。
死が満ちる空間に同居する生の世界。野口さんは「現代社会は生の感覚が満ちていて、死の恐怖はほとんどない。放っておくと自分は死ぬという状況で、命を続けることがいかに大変かを認識できる」とも話しています。
ほかに沖縄慰霊の日(6月23日)当日。沖縄市立山内小2年徳元穂菜さんは自作の「平和の詩」を【………せんそうがこわいから/へいわをつかみたい/ずっとポケットにいれてもっておく/ぜったいおとさないように/なくさないように/わすれないように/こわいをしって、へいわがわかった】と朗読し訴えかけましたが何とすばらしい詩なのでしょう。
忘れられないのは、福島原発事故での避難者集団訴訟で最高裁が6月17日に出した「仮に東京電力に対策を命じても事故は避けられなかった」との結論。「実際の津波は想定より規模が大きく、仮に国が東電に必要な措置を命じていたとしても事故は避けられなかった」としたが、原告団代表の「事故が起きても国は責任を取らず、被災者を守らない。こんな国に原発を動かす資格はない」の言葉をどう思っているのか。
そして。もうひとつ。作詞家阿木燿子さんがウクライナ危機をテーマにした反戦歌を世に出しました。タイトルは【River・2022】。♩River 彼らをどこへ運ぶ/River やつらをどこへ運ぶ/River 我らをどこへ運ぶ/ひまわり(ウクライナの国花)畑が蘇るのはいつだ…といった内容です。RiverにはNeverの語感が込められ、人間の尊厳を踏みにじられたウクライナの人々の心が迫ってきます。
こうした中、今月10日には参院選の投開票があります。公約にゆがみがあってはなりません。何はともあれ、武士に二言があってはいけないのです。(2022/7/1)