皆さん、明けましておめでとうございます――しかし原発に関しましては、安易に新年を寿ぐことが出来ないような、大きな問題が昨年、2022年の夏から年末にかけて起こりました。
原発推進派の圧力は徐々に増していましたが、8月に岸田文雄首相が、2月のロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー逼迫に対応するため、原発活用の検討を指示したことで決定的な変化が始まります。内閣による原発政策の大転換です。これは全国の電力会社、原発所在地及び所在県にいろいろな問題を起こしましたが、高レベル放射性廃棄物貯蔵センターや再処理工場のある青森県は、影響の大きい県といえるに違いありません。
それでは、ふた昔まえの青森に舞台を移し、県単位で活動している核戦争防止国際医師会議(以下、IPPNWと略)の話を挿入して、原発とその周辺を考えてみましょう。
従来、IPPNW日本支部の理事会は広島市で開催されてきましたが、2000年10月14日(土)には、青森市で開かれました。被爆地の広島・長崎を除くと、青森は最も熱心な県だったのです。出席者は青森県が理事以外も含めて11人、広島県は私を含めて8人、長崎2人、その他4人で、日本支部長を議長として議事がすすめられました。
最初の事項は、同年6月29日から4日間パリのルネ・デカルト大学を主会場とした第14回がIPPNW世界大会の報告と地域会議の検討でした。世界大会の翌年は、世界をいくつかに分けた地域会議を行うことになっており、翌2001年の東北アジアの地域会議としては北朝鮮のピョンヤン(平壌が、候補に挙がっていました。この年の6月13~15日、韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記が首脳会談をしており、ピョンヤン案をすすめることになります。
次の大きな事項は、原子力利用問題であり、青森県側としては長年の懸案事項でした。前年の1999年には東海村における㈱JCO(原発用の核燃料製造における中間工程を請け負う会社)の臨界事故がありましたし、プルトニウムの蓄積に関しては、原爆を造るためではないかという外国の疑念もあり、議論は沸騰しました。要点を抽出すれば、原子力産業の透明性を保ち、外国からの疑念を解くためにも、国際原子力機関(IAEA)によるプルトニウムの国際管理などを呼び掛けるべきだ、といったところです。印象に残ったのは元青森県医師会長の、「原発にしろプルトニウムにしろ、人体に悪影響のあるものは、すべて悪い」という言葉でした。
これに関し「原発やプルトニウムに関し、統一見解を出せぬか」という発言がありましたが、すでに予定時刻を一時間も超過しております。副支部長より、「今すぐ統一見解を出すのは困難ですが、熱心な討議により前進がみられました」と閉会の辞が述べられました。
原子力発電を完全否定するまでには至らなかったものの、予定のスケジュールとして翌15日(日)は、六ヶ所村の原子燃料サイクルや再処理工場の見学が控えていました。
その日、理事会出席者や関係者16人は貸し切りバスで、下北半島の付け根に近い上北郡の太平洋側に拡がる六ヶ所村に向かいます。ここは6集落が合併して生まれた大きな村で、さらに北上すると、下北半島を原子力半島にした発端といわれる「むつ市」になります。日本最初の原子力船「むつ」は1969年に進水、むつ市大湊港を母港にしましたが太平洋上で放射能漏れを起こし、マグロ漁で名のある大湊の漁民は帰港に反対したという歴史もあります。
さて六ヶ所村では、型の如く原燃センターで職員の説明を聞いたあと、広大な町をなしている敷地内の諸施設を見て廻りました。各施設の内容紹介は長くなるので別の機会に譲りますが、印象として感じたのは、廃棄された放射性物質の半減期があまりにも長いこと、東北地方が日本の犠牲になっている、ということでした。明治維新時の薩長軍に最後まで反抗して敗れ、会津藩23万石から下北半島の斗南藩3万石に移封された史実が思い出されます。
これは我ながら思い過ごしでしょうが、昨年12月20日18時から、まんざら無縁でもない情報が発表されました。日本ペンクラブ環境委員会の企画による、フリーライター吉田千亜さんの講演「軍事研究と科学者」です。「脱原発社会をめざす文学者の会」の諸兄姉には日本ペンクラブ会員も多数おられますし、吉田千亜さんはノンフィクション『孤塁』によって第1回「脱原発社会をめざす文学者の会」文学大賞を受賞しておられるので、ご存知の方も多いでしょう。
私はZoomウェビナーで視聴したのですが、あとでYouTube による限定公開もありました。
一般公開ではなかったので、ここでは詳しい内容については差し控えますが、福島の復興支援は軍事化に繋がっているのだろうというもので、私も感じていたことでした。
それではしばらく東北地方について調べてみましょう。
かげろふや四十四億年餘の半減期
原子力船「むつ」の母港に氷雨降る
青森の夢は No Nuke 虎落笛
(2023.1.8.)