連載 郷福島の復興に想う 第8回 トリチウムはやはり海洋放出すべきではない 谷本 多美子(アイキャッチ画像 2023年5月汚染水が排出されようとしている太平洋) 2023.06.22 朝日新聞が朝刊の社会総合面に5月30日から5回に亘って、東電福島第一核発電所の処理水が、地元住民の理解が得られないまま、夏に海洋放出が迫っている現状を報道していた。内容をかいつまんでいうとざっと以下のようになる。 今年2月下旬、県立相馬総合高校新地校舎で、「廃炉とアルプス処理水について考
連載 故郷福島の復興に想う第7回 故郷福島の復興に想う――汚染水? 処理水? 谷本 多美子(アイキャッチ画像 請戸漁港の大漁船 2023年5月4日) 2023.05.25 東京の桜が見頃になった3月のある日、都内の某ホテルで「福島原発における廃炉・汚染水・処理水の問題について」、経済産業省大臣官房福島復興推進グループ 参事官 宮下正巳氏の話があるというので聞きに行った。専門的なことはわからないが、レジュメを見ながら説明を受けて、正直不安は残った。 汚染水の前に、福
連載 故郷福島の復興に想う第6回 故郷福島の復興に想う――国策とは 谷本 多美子 2023.04.27 3月に入り故郷南相馬市の集落の代表から立て続けに訃報が届いた。2011年3月11日以降、集落の住民の方が亡くなると代表を通して必ず連絡は来るが、筆者は遠方ゆえ葬儀に参列することは叶わない。本来なら、集落のどこかで不幸があると、各戸から一人ずつ手伝いに行く習わしになっていた。原発事故以後集落の人々
連載 故郷福島の復興に想う第5回 請戸小学校物語 谷本 多美子 2023.03.23 2023年2月20日の朝日新聞朝刊に「またこの場所で」と題して東日本大震災、原発事故で大きな被害を受けた浪江町請戸の苔野(くさの)神社で開かれた、豊漁と豊作を祈る安波祭(あんばまつり)りの記事が載っていた。請戸地区の多くは災害危険区域に指定され人が住めなくなっているが、2月19日はゆかりの人々が
連載 故郷福島の復興に想う第4回 干拓は必要だったか 谷本 多美子(アイキャッチ画像 2021年4月の井戸川 高橋隼人氏撮影) 2023.02.23 生まれ育った故郷南相馬市に帰る家はもうないのだが、祖父の代からの土地がまだあちこちに残っている。先祖たちが苦労して手に入れ耕してきた土地が、今では荒れ放題で、あること、が負担になっている。原発事故により、その負担はさらに大きなものとなった。いつかは相続もされないまま放置されることになるのだろうが、
連載 故郷福島の復興に想う第3回 原発に一番近い教会 谷本 多美子(アイキャッチ画像 福島第一聖書バプテスト教会 佐藤将司氏撮影) 2023.01.26 2023年の幕が開いた。新年を迎えるたびに、原発事故から今年の3月でまもなく○○年、と数える癖がついた。今年の3月11日で丸12年になる。年数は経つが記憶は薄れることがない。福島第一核発電所の爆発事故が起きて10か月後の2012年の元旦を、筆者はアフリカのルワンダで迎えた。避難先で危篤状態にあっ
連載 故郷福島の復興に想う第2回 大熊町の核発電所 谷本 多美子(アイキャッチ画像 核発電所近辺 佐藤将司氏撮影) 2022.12.22 佐藤将司氏撮影 福島第一核発電所に隣接する双葉町にある母校福島県立双葉高校の校訓は、質実剛健、終始一貫、だった。元は男子校としてスタートしたので、ふさわしい四字熟語だったのだろう。敗戦後新しい学制になってから、少しずつ女子の入学も認められるようになり、筆者も何期目かに入学することになったのだ
連載 故郷福島の復興に想う第1回 双葉町役場新庁舎再スタート 谷本 多美子 2022.11.24 2022年8月30日、双葉町の一部が特定復興再生拠点として、避難解除された。続いて9月5日、双葉町役場が新庁舎で11年半ぶりに再スタートした。5階建ての立派な元の役場は帰還困難区域の中に残り、20~30メートル南側には放射性廃棄物の中間貯蔵施設もできている。新庁舎と旧役場との距離は2、3㎞くらい