『菅野みずえさんのお話 福祉の仕事で35年働き 東電の原発事故で人生が変わってしまった』

書名: 『菅野みずえさんのお話 福祉の仕事で35年働き 東電の原発事故で人生が変わってしまった』
著者: アイリーン・美緒子・スミス
版元: アジェンダ・プロジェクト/星雲社
発行日: 2021年3月22日
ジャンル: ノンフィクション


【内容】アイリーン・美緒子・スミスさんがインタビューアーとして、浪江町の被災者の菅野みずえさんの身に起こった実体験を綴った記録である。
 菅野みずえさんは、夫の実家がある福島県浪江町の津島で、夫と息子と三人で暮らしていた。3・11東日本大震災が起こったときには、みずえさんは原発立地自治体の大熊町の福祉職員として働いていた。
 大地震と大津波に襲われ、福祉施設は大きなダメージを受ける。その恐怖の体験談が生々しい。津島の自宅にほうほうの体で逃げ帰った翌12日16時、家の前に停まった車の窓から、ナウシカに出てくるようなガスマスクを着けた防護服の男たちが「頼む、逃げてくれ」と必死に避難しろと怒鳴っていた。
 放射能雲が津島を襲っていた。みずえさんは何が起こったか分からなかったが、顔の皮膚がぱりぱりに乾き、笑うと皺が切れて出血する騒ぎになっていた。みずえさんも一緒にいた家族も、これは異常な事態だと避難を決意するのだが…。
 読んでいると背筋が寒くなる実話である。
 インタビューアーのアイリーン・美緒子・スミスは、カメラマンのW・ユージン・スミスの元夫人で、共著の写真集『MINAMATA』を出している。遠藤周作との共著『隠れ切支丹』も出版している。80年代初期から脱原発運動をしている。


推薦者:森 詠

関連記事

最近の記事new

  1. 連載文士刮目第48回【方言に見る能登有情 伊神権太(写真は、➊「能登はやさしや土までも」。能登の人々は老若男女ともに、どこまでもたくましく、かつやさしい=能登人間ものがたり(北陸中日新聞七尾支局編)から➋名古屋弁で能登を心配する人々も多い=名古屋名物「なごやべん」から】

  2. <連載>原発の蔭と影 第30回(最終) 沖縄の電力事情 天瀬裕康

  3. 連載自由詩 げんしのし30 森川 雅美

TOP