第3回 東京五輪と感染拡大 原発と原爆投下

 若者たちよ
 君たちは 平和がどんなに尊いか
 あなたたちは平和がどんなに幸せかを
 もっともっと知ってほしい
 そして語りついでほしい……
 地球に丸い輪がまわる
 まわれまわれまわれ 緑の地球よ
 まわれまわれまわれ まわれ
 平和の地球よ いつまでも

 以上は私がかつて乗船したピースボートの船上で開かれた「PEACE DAY 長崎原爆の日・追悼セレモニー」で若者たちがバトンリレーで原爆、学徒、悲しみ、愛、晴、願いの順で【原爆の詩】を朗読していった中の一節です。
 8月といえば1945年8月6日に広島、9日には長崎に投下された原子爆弾により多くの命が奪われました。「ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ こどもをかえせ/わたしをかえせ わたしにつながるにんげんをかえせ/にんげんの にんげんのよのあるかぎり くずれぬへいわを へいわをかえせ」(峠三吉の新編原爆詩集から)の詩でも知られる1945年の夏は、暗黒の時代の始まりでもありました。

 あれから76年たち、今は2021年8月です。7月23日にはコロナ禍のなか、一年遅れの東京オリンピックの開会式が無観客で行われ、その後各地で熱戦が繰り広げられ、一方で首都圏を中心に第5波の感染拡大が進んでいます。そればかりか、前回本欄でも触れたように私たちはこの間にも東日本大震災の発生に伴い起きた福島第一原発事故による放射能汚染に蝕まれ、復興五輪なぞとんでもないです。こうした現実を前に、かつての軍国少女を自認する知人女性は「原爆投下も原発事故も人間を不幸のどん底に突き落とし社会を破壊してしまう点では同じだ」と言い切ります。あゝ、それなのにです。
 先日の新聞報道によれば、老朽化による安全性への不安が高まっているというのに政府は原発の運転に関する「原則40年間、最長60年間」の法定機関の延長を検討している、というのです。何たること。国民の気持ちを逆なでしています。どうやら政府は「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」を理由に原発活用への揺り戻しを図ろうともしているのです。安全を無視した暴挙がなし崩し的に許されてよいものか。答えは明白です。

 時あたかも東京五輪のさなかで日々、熱戦が繰り広げられ日本勢の活躍が目立ちます。オリンピックといえば、過去にも戦争で3度中止、火山噴火による開催地変更、選手村へのテロ襲撃などを乗りこえてきました。そのつど人類は立ち上がってきました。そして。今回はといえば、世界中にまん延したこのコロナ禍をいかに乗り越えるか、です。

 ただ立ち止まっているだけでは美しい空も、海も、山も、川も。人間の心も戻ってはきません。そんな中、広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」訴訟で政府は一審に続き原告全員に被爆者健康手帳の交付を認めた7月14日の広島高裁判決に上告断念を表明。判決が確定しました。「黒い雨」訴訟と東京五輪、コロナ。これを機に真の平和とは何か。みんなで考えてみたいものです。(2021/8/1)

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