第15回 安倍晋三元首相の銃撃死に思う。【罪を憎んで人を憎まず】

 安倍晋三元首相の参議院選挙の街頭演説中に起きた銃撃死に始まり、東電福島原発事故の株主代表訴訟での勝俣恒久元会長ら東電元役員4人への13兆3210億円の賠償命令、新型コロナウイルス第7波到来に伴う爆発的拡大など。7月もいろんなことが起き、そのつど胸が押しつぶされる思いをしたのは誰も同じでしょう。人がこの世に生きる限り、もろもろの事件が発生するのは必然と思うにつけ、胸を去来するものがあります。
 それは事件発生時にいつも浮かぶ【罪を憎んで人を憎まず】という言葉です。サンズイ(汚職)や殺し、稚内沖オホーツクの海への大韓航空機撃墜と、かつて現場取材のつど味わいました。敢えてこの言葉に付け加えるなら、いざ大事件が起きてしまったら、こうした罪を起こした時代と社会背景を憂い、人を憎む前に世の中をよくせねば、とでもいったことでしょうか。人は、なぜ。悲しい罪を繰り返すのか。胸を痛めるのは誰とて同じ。元首相の命を奪った山上徹也容疑者は奈良県警の調べに、こんなことを話しているそうです。
「母親が父親の死亡保険金や相続した不動産の売却益などを原資に総額約一億円を世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に献金。そのために家庭生活が滅茶苦茶になってしまい、旧統一教会を二十年以上前から恨んでいた。その統一教会を(韓国から)招き入れたのが岸信介元首相。だから孫の安倍元首相を殺した。襲撃は7月に決意し、手製銃の製造や試し撃ちなど準備を進めてきた。元首相は統一教会友好団体のイベントにビデオメッセージまで寄せている」と。

 よほどの執念から起こしたに違いありません。そして旧統一教会への献金システム。これは、どうなっているのか。私には、なぜか森友学園との土地取引を巡る公文書改ざんで2018年3月7日に自ら命を絶った財務官僚赤木俊夫さん(当時54歳)の悲劇が思い起こされるのです。赤木さんを自殺に追いやったものは何だったのか。山上容疑者の顔が二重映しとなって浮かび上がってくるのです。森友学園は統一教会とも関わりがあったといいます。世界平和統一家庭連合は、家族は一体という家族幻想を巧みに利用した集金組織ではないのか。宗教が権力に歩調を合わせ政治家がそこに擦り寄る。ならば、もはや集金マシンだ。この点の徹底解明をすることこそが大切。そうでない限り、こうした事件は再び起きても不思議でありません。お金に対する醜い目。事実が明らかになればなるほど、あの赤木さんの妻は今、どんな思いでいるのか。胸が痛みます。

 政府は7月22日の閣議で安倍元首相の国葬を全額国費負担で東京・日本武道館ですることを決定。首相経験者の国葬は1967年の吉田茂氏いらい二例目です。一方で複数の市民団体は「国葬とする法的根拠がない」「国民を強制的に喪に服させることになり、思想信条の自由を保障した憲法に反する」と国葬には反対を唱えています。真相解明がされないままの赤木さんの妻は今、どんな気持ちでいるのか。個々の政治家が宗教とどう関わっているのか。国葬以前に、この際、安倍政権の検証も併せ事件の徹底解明をすることこそが、世直しの絶好の引き金になるはず。森本学園に加計学園、花見の宴。みな根っこは同じ。民主主義国家として許されないこと。名もなき市民を泣かせてはいけません。
 罪を憎んで人を憎まず。そのためにも事件の徹底捜査と解明を願いたい。(2022/8/1)

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