連載文士刮目 第39回 【自由と平等、真の平和とは】 伊神権太(写真 暗殺未遂現場で銃弾をものともせず、こぶしをあげるトランプ氏を報じた新聞) 

 日本中の視線を集めた東京都知事選。56人が立候補し、いかがわしいポスターの掲示など多くの問題点を残した首長選で小池百合子さん(72)が再選されました。そして。一方のアメリカ大統領選といえば、です。ドナルド・トランプ前大統領(78)が右耳に銃弾を浴びながらも奇跡的に助かり、それでもこぶしを振り上げ、党候補に正式指名されました。トランプ前大統領は、その後、指名に先立ち自らに近い中西部オハイオ州選出のJ・D・バンス上院議員(39)を副大統領候補に選んだと発表。民主党のジョー・バイデン大統領(81)は高齢不安を理由に選挙戦からの撤退を表明。カマラ・ハリス副大統領(59)の立候補が確実視され、初の女性米大統領誕生も夢でなくなってきました。というわけで。世界注視の米大統領選が間近に迫っています。


 そんな折も折、米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手(30)はといえば、です。米アーリントンで行われたオールスター戦にナ・リーグの「2番・指名打者」で出場、3回に球宴初本塁打となる先制3ランを放ち、日本人では2007年にランニング本塁打を記録したイチローさん(マリナーズ)以来2人目の快挙となりました。そして何よりも7月26日(現地時間)からは世界注視の中、フランスはパリ、セーヌ川河畔を主会場としたパリオリンピックが始まり、各種目とも日本人選手の活躍に大いなる期待と夢が膨らんでいます。 

 さて。それはそれとして、日本国内はといえば、です。先の改正政治資金規正法の可決、成立に続き、こんどはあってはならない紅こうじサプリメントによる小林製薬による腎疾患など大量死問題、さらには防衛省の特定秘密の違法な取り扱いをはじめ、防衛官僚によるパワハラ、海上自衛官の潜水手当の不正受給など大量218人の懲戒処分(7月12日に公表)…と信じられない事態が、次々と表面化。本来の責務が日本を守るべきはずの自衛隊の隠れた悪事となると目を覆うばかりです。こうした現実社会を目の前に私には、このところのニッポンは綻びだらけ、悪事の連続でタガが緩んでいる。そんな気がしてならないのです。
 ほかに最近の動きといえば、です。障害者らに不妊手術を強要した旧優生保護法の最高裁による違憲判決(7月17日)、さらには同19日の米マイクロソフト(MS)のシステム障害に伴う世界各国での空港や鉄道、病院、銀行でのトラブル続発も目を覆いたくなるものでした。そして。これら数々の不幸にとどめをさすように連日のように全国各地で相次いだのが、炎天続きの中での熱中症による死者の続発です。ほかに線状降水帯の多発。これも各地に多くの被害をもたらし、見逃すわけにはまいりません。

 というわけで、パリ五輪が行われている中、私たちにとって「今」を大切にすることほど重要なことはない、と。そう思うのは私だけではないでしょう。私は、オリンピックもよいですが今は〝世界市民〟の一人として【熱狂と落胆。これ、いかに】と訴えたいのです。かつて妻と訪れ、クルーズを楽しんだ芸術・文化の都、パリ。セーヌの流れ。ノートルダム寺院にルーブル博物館、エッフェル塔など。あの川の流れが、本当に清らかなものに改善されているのかどうか。日本選手の活躍ぶりを確かめる一方で、私たちは浮ついた気持ちばかりではいられません。依然として続くウクライナ、ガザでの醜い戦争も見逃せません。
 どこまでも平和な世界を願って、現実には無情極まる世界の現状に今一度、目を向ける。誰もが、そうすべき日々が目の前にある。原爆が投下された広島、そして長崎の日が迫っています。真の自由と平等、平和への道をみんなで考えるにはパリオリンピックの開催をきっかけにみんなで考える良いチャンスかもしれない。そんな気がするのは私だけでしょうか。

(2024/8/2)

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