隔月連載 げんぱつあくぎょうはなし 第10回 西尾 漠 (アイキャッチ画像撮影=片岡遼平)

α:佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長が、高レベル放射性廃棄物処分地の選定に向けた文献調査の受け入れを表明したね。
β:建設、飲食、宿泊業などの3団体から町議会に提出された調査受け入れを求める請願が4月15日に原子力対策特別委員会(全議員)に付託され、17日に資源エネルギー庁と処分実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)から説明を受け、25日の委員会、26日の本会議で採択されてすぐ、5月1日に斎藤健経済産業相名の申し入れ文書が町長に手交された。5月10日、町長がそれに答えたものだ。マスコミは「拙速」と書いてるけど、なんともせわしない展開だ。
γ:それだけ根回しができていたとも、国が焦りまくっていたとも見える。北海道寿都すっつ町、神恵内かもえない村で実施された文献調査では、次の概要調査に進むことに知事が反対するのが確実視されているだろ。そのため文献調査地区が再びゼロになるのを避けるべく、新たな受け入れ自治体が決まるのを待って調査報告書の完成をずるずると遅らせる時間稼ぎが行なわれていた。
 期待された長崎県対馬市が市長の反対で失敗して、後がないんだ。地元の佐賀新聞は5月22日、「早期決着、国も後押し 『対馬』後に進んだ地ならし」と報じた。何としても町長に申し入れを受諾させる必要があったんだよ。
β:それにしても、前回国が申し入れた神恵内村は「科学的特性マップ」で火山・火成活動による「好ましくない特性があると推定される地域」が大半で、鉱物資源に関する「好ましくない特性があると推定される地域」もある。玄海町はほぼ全域が鉱物資源に関する「好ましくない特性があると推定される地域」だ。全国には1700余を数える市町村がある。「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」で「輸送面でも好ましい地域」も多々あると「マップ」は示している。僕は好ましいなんて考えてないけど。
 ともかく、よりによって自身がつくった基準で好ましくないとされるようなところにしか申し入れできていない。
γ:神恵内村長に経産相名の申し入れ文書を手交した資源エネルギー庁の幹部は「村議会で請願が採択されるなど、一定の理解活動が広がっており、申し入れのタイミングだと思った」と報道陣に語っていた。けっきょく受け入れてくれるところが「適地」なんだ。
 と言っても処分場の「適地」じゃないな。それは後回しで「文献調査の適地」か。まさしく文献調査の正体見たりだね。
α:玄海町にとっては、それでいいのかもしれないな。不適地である上に、佐賀県知事も反対を表明している。先へ進めないからこそ、安心して最大20億円という交付金をもらい文献調査だけ受け入れればいいんだよ。
β:推進派町議の一人は「20億円がほしくて手を挙げたわけじゃない。冗談で、資源エネルギー庁に20億円いらんと言ったらなんと言うやろ、と同僚議員とも話した」と見えを切っていたけどね。町長も「交付金のことは考えていなくて、国とも相談してない」そうだ。「ただ、あとに続くところがもらえないという流れをつくってしまってはいけないと感じている」のでもらいましょうと。
γ:請願を出した団体でも交付金を理由にはしていない。「当町は高レベル放射性廃棄物の発生原因を有する自治体の責務として、文献調査に応じることをもって、課題解決に苦労している国に協力すべきと考える」と格調高い。「新ロジック」と評した新聞もあったね。
 とまあ、いろいろ理屈をつけてるけど、調査だけでいいというのが本音だろう。
β:5月11日付東京新聞に掲載された10日の受け入れ表明後の記者会見で、町長は、町議会の全員協議会で「立地町が受け入れすることで手を挙げる市町村が出て、適地が見つかるとありがたいと話をした」という。そんな形で国に協力するわけだ。
「文献調査で適地と結果が出たら、最終処分地を受け入れる考えは」との問いには「受け入れしませんよとこの場で言える話でもない」。「現時点で最終処分場を受け入れる考えは」と再度訊かれても「受け入れないとここで言うのはなかなか難しい」。
 5月11日付朝日新聞は「処分場設置には否定的」と小見出しをつけていた。
 処分地は受け入れるつもりはさらさらないのに文献調査は受け入れますって、おかしいでしょ。でも、そうすることを経産省が奨めている。経産相名の申し入れ文書いわく「文献調査は処分地選定に直結するものではなく、議論を深めていただくためのもの」「文献調査だけを実施する場合でも今後の理解活動の促進や技術的ノウハウ蓄積の観点から非常に意義がある」。
α:国にとっても、それでいいということだよね。要は処分事業が進んでいるふりさえできればいいんでしょ。いつまでそんなことを続けるんだろう。
γ:残念ながら私たちの世代は、将来の世代に負担をかけざるをえないものを残してしまった。少しでも早く原発をやめて、これ以上核のゴミを生みださないようにする必要がある。その上で、既に発生したものについては、地下深く埋めればよしというのは論外としても、どこでも嫌われるものをどこかで管理しなくちゃならない。原子力発電の後始末にどう向き合っていくか大きな議論をしていくことが、迂遠なようでもたいせつなんじゃないか。

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