連載文士刮目第46回 拝啓ドナルド・トランプさま 平和な世界実現を 伊神権太(写真「鉱物資源合意見送り」を報じた3月1日付の夕刊)

 私は日本在住の一匹文士いっぴきぶんし、伊神権太と申します。今回は私とは同世代、いや少し若い貴兄、すなわち第47代米大統領のドナルド・ジョン・トランプさん(1946年6月14日生まれ)、あなたに同世代の一人として常日ごろ感じているところを友好国日本国民の一人として心からの手紙として書かせて頂きます。何よりも世界平和を願って、です。

 まずは1月20日の大統領就任、おめでとうございます。さて日本の尾張名古屋は愛知県江南市で生きる私・伊神権太がなぜ、こうしてあなたへの手紙を書くのか。それはあなたが私とは同世代だから。そしてトランプさん。あなたには世界平和に寄与して頂きたいからです。大統領就任以降、あなたは気になる発言が多過ぎる。そんな気がします。
 そして。あなたが、3年前ロシアがウクライナに侵攻して始まった戦争やその後のイスラエル・イスラムハマス間の醜い闘いなど世界各地の戦争を危ぶまれ、これら当事国に対して停戦への努力をされるなど平和な世界実現を望まれていることは、あなたの言動から十分に承知しております。だから、あなたへの世界の人びとの期待が大きいのも事実です。
 でも、大統領就任後の言動を耳にするかぎり、あなたが心底、世界の平和を望んでおられるかとなると甚だ危うさが感じられます。それは、とりも直さずあなたのこれまでの発言と権力の象徴ともいえる大統領令への数々の一方的な署名を見る限り「世界平和」よりは、自国優先「アメリカファースト」の言動が目立つからです。【掘って、掘って、掘りまくれ】【メキシコ湾をアメリカ湾に】……の言葉しかりです。口では平和な世界を願うあなたですが、何はともあれ、ウクライナの鉱物資源=鉱物資源の合意は2月28日の会談で見送りに=など自国権益の確保が多ければ多いほど良いとの自分勝手な姿勢がうかがわれます。これでは国際紛争の火種を自らつくっている、と。そう思われてもしかたありません。

 実を言いますと私は、あなたの大統領二期目を、とても楽しみにしていました。でも、ことここに至っては「ずいぶんと勝手し放題だな」っと。失望せざるをえません。各国への一方的な関税上乗せに始まり、パナマ運河やデンマークの自治領グリーンランドの所有発言など自国優先の姿勢は他国の権益への一方的な口出しと言われても仕方ありません。
 そして。これまで呼ばれてきた「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に一方的に呼称替えするなど行き過ぎにも程度があります。このままだと勝手し放題のふるまいが、それこそあなたの願いとは別方向に突き進んでしまいます。私は今、そんな危惧さえ感じているのです。というわけで、私は世界市民のひとりとしてあえて言わせてもらいます。
 まずはイスラエル・ハマス戦争に関して。あなたはガザを米国で所有するとおっしゃられました。でも、これだけ憎しみが積み重なったガザを統治出来るのでしょうか。次にメキシコ湾をアメリカ湾だとして大統領令で名称変更しましたが、その行為自体が許されません。この暴挙には、さすがに貴国を代表するマスメディア・AP通信が反論。これに対してあなたは大統領府への記者の立ち入りを禁じるという幼稚な挙に出ました。有能な記者たちが失望するのは当然です。そして欧州連合(EU)からの全輸入品への25%の関税問題など開いた口が塞がりません。

 ところで日本には【調子に乗るんじゃないよ】という戒めの言葉があります。NHKの人気番組チコちゃんじゃないですけれど。トランプさん。あなたの言動を見る限り、【調子にのるんじゃねえよ】とチコちゃんに叱られても仕方ありません。そして。こうした混沌とした世界の中であなたがこの先、どう生まれ変わっていくのか。ここ当分は目が離せないのも事実です。
 私はつい最近、昨年満80歳になられた青春歌謡歌手舟木一夫さんのコンサートを愛知県一宮市民会館で見てきました。トランプさん、あなたにも青春時代はあったはずです。国民的歌手でもある舟木さんはとてもステキでした。原発事故防止はもとより世界のリーダーとして平和を望まれるあなたにも、舟木一夫さんの歌声を聞いてほしかった、と思います。トランプさんも舟木さんも。そして私も、みな同じ。平和を願う地球市民のひとりなのですから。こんごのご多幸と世界平和、安らぎを願い、あなたへのラブレターを締めくくります。良薬は口に苦し、かな。(2025/3/7)

「若さにあふれた「舟木一夫友の会」のみなさん=愛知県一宮市萩原「うお六」で

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