2024年元日に起きた能登半島地震とその後の豪雨水害に泣いたかつての私の任地、石川県能登半島を訪問。琴伝流大正琴弦洲会の皆さんによる「能登半島地震の震災復興支援コンサート~あの日 あの時 あの歌が~】を輪島市の仮設団地、道下第1団地(270戸)の集会所仮設ステージで行ってきた。当日(6月15日)は弦洲会の倉知弦洲会主と長男崇さん、愛知県から訪れた幻洲会門下の7人が復興応援歌【能登の明かり(伊神権太作詞、牧すすむ作曲、安本和秋編曲、歌は岡ゆう子さん)】を一糸乱れぬ大正琴の調べで奏で、地元バンド・ジェントルソウルwithまみの皆さんも友情出演し「能登の明かり」などを演じて歌ったが全ての曲に思いがこもり、胸にじんと染み入る内容で、みんなの力で実現させて良かった」と思っている。仮設住宅で過ごす被災者の誰もが真剣な表情で聴き入ってくださり皆さん口々に「元気が出てきました。応援歌【能登の明かり】も聞きやすかった」と笑顔で語ってくださり、準備に準備を重ねたかいがあり、嬉しく思っている。と同時に能登半島は長年、新聞記者として携わった土地だけに、あらためて地方の大切さを思い知ることにもなった。
さてその支援コンサートから帰り。私はあらためて、新聞社の地方記者として歩んできた「地方」での道のりを振り返ってみた。北ア上高地を管内に山岳遭難発生のつど現地に駆け付けた信濃は松本平を皮切りに、真珠と海女のふるさとで50年前に伊勢神宮の式年遷宮取材にも携わった伊勢志摩、樹齢1500年の岐阜県本巣市根尾に立つ国の特別天然記念物淡墨桜(うすずみざくら)、ついで尾張弁とひつまぶしなど数々の名古屋めし、名古屋城でも知られる名古屋、空港のある街・小牧、さらには能登半島、芭蕉結びの地で知られる水都・大垣、比叡山延暦寺と三井寺、琵琶湖周航の歌を何度も歌い「売り手によし、書い手によし、世間によし」の〝三方よし精神〟をたたきこまれた湖国・滋賀……とあらためて地方文化の重みを思い同時に自ら手がけた連載企画<海女その世界><空港昨今><能登の方言><こらむ「天びん棒かついで」><湖(うみ)の子、詩(うた)の旅>……などを思い出すのである。
そして。私はこれら地方記者生活の中でも、若かりし日にある上司が話されていた言葉。【「地方は宝」。宝なのだから。君たちは、その土地の人々と一緒の気持ちで一生懸命に取材し書いてほしい】と口を酸っぱくして言われていた、あの顔をいまだに忘れられない。というわけで、能登での支援コンサートはその延長戦上で多くの人々の心がひとつになって開花、実現した事実をここに報告させて頂く。そして。今回久しぶりに能登半島を訪れ思ったこと。それは、やはり【地方は宝だ】に尽きる。
最後に。能登半島ならば、だ。能登方言に七尾まだら。輪島の朝市に輪島塗り、千枚田、珠洲の揚げ浜塩田、恋路ケ浜、魚汁(イシル)、志賀町のころ柿、門前の雪割草群落と泣き砂の浜、関野鼻のヤセの断崖、七尾の和倉温泉にデカ山、花嫁のれん、のと鉄道(七尾―穴水)、中島に誇る仲代達也さん率いる無名塾と桜の駅、能登島水族館、能登町のあばれ祭り、半島至る所で見られるキリコと花火、家々を守る間垣……等など。ほかにもいっぱいあるが。皆、地方の宝なのだ。それだけに、私たちは能登の再生を願い、地方の文化をいつまでも大切にしたい。
そして。災害も戦争もない。いつまでも平和な社会であってほしい、と願うのである。
♪<イヤヨーエヨエー……>(と、両手をこすりこすり)
「めでためでたの若松様よ 枝も栄えて葉も茂る…(七尾まだら)」と。また、みんなで歌ってみたいですよね。(2025/7/4)

