隔月連載 げんぱつあくぎょうはなし 第13回 西尾 漠 (アイキャッチ画像撮影=片岡遼平)

α:六ヶ所再処理工場の竣工がまた延びたね。27回目の延期だって。
β:2024年度上期のできるだけ早期とされていたのが、26年中にと見直された。
γ:また延びた、と呆れるだけでは済まない。関西電力が昨23年10月10日に福井県・同県議会に説明した、溜まり続ける使用済み燃料の県外搬出ロードマップでは、2024年度上期に竣工する六ヶ所再処理工場で26年度から受け入れが開始されるとしていた。それが崩れたとあって、県議会では40年超の運転をしている美浜原発3号機、高浜原発1・2号機の即時停止を求める声も上がった。もともと23年中に福井県外の中間貯蔵施設候補地を確定できないときは40年超運転の3基を停止するという関西電力の約束があったのをごまかし続けてきていたんだから当然だよね。知事は「24年度末までに実効性ある見直しを提示できない場合は運転を認めない」と表明している。
 六ヶ所再処理工場の延期を日本原燃は8月28日に発表したけど、実は1日も早く表明したかったとする関係者の本音を、8月30日付の東奥日報は報じていた。しかし「『原燃が早々に白旗を揚げれば、関電の使用済み核燃料対策ロードマップ(工程表)が崩れてしまう』(原子力行政幹部)との懸念が強まった」ことに配慮してずるずると遅らせていたと。
β:9月26日には、青森県むつ市の使用済み燃料中間貯蔵施設の操業開始に向けて検査用の使用済み燃料が、東京電力の柏崎刈羽原発4号機から搬入された。原発敷地外の貯蔵施設に初めて搬入されたことになる。これについても、安全協定締結に向けた青森県やむつ市主催の説明会では六ヶ所再処理工場は「本年9月完工」とされていた。姑息にも8月9日の協定成立を待って20日後に竣工予定の先送りが発表された。
α:中間貯蔵施設を所有するリサイクル燃料貯蔵(RFS)にも関西電力にも忖度尽くしの結果の8月末発表だったんだね。いや、RFSじゃなくて、親会社である東京電力、日本原子力発電に気を使ったのかな。
β:問題は貯蔵後の行き先だ。「中間貯蔵」の期間は50 年間と、8月9日に結ばれた青森県、むつ市、RFSの三者間の安全協定で定められている。親会社の東京電力、日本原子力発電は立会人の署名をした。ところが六ヶ所再処理工場は40年間の操業とされていて、50年後にはなくなっている。それで辻褄合わせに、経済産業省は40年超の長期利用を言い出している。操業できるかどうかもわからないのに。
γ:そもそも貯蔵後は六ヶ所再処理工場の次に続く「第二再処理工場」に送られる予定とされていたんだ。2005年に原子力委員会がまとめ閣議決定された「原子力政策大綱」にも、こんな記述がある。
「中間貯蔵された使用済燃料及びプルサーマルに伴って発生する軽水炉使用済MOX燃料の処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況、核不拡散を巡る国際的な動向等を踏まえて2010年頃から検討を開始する。この検討は使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用するという基本的方針を踏まえ、柔軟性にも配慮して進めるものとし、その結果を踏まえて建設が進められるその処理のための施設の操業が六ヶ所再処理工場の操業終了に十分に間に合う時期までに結論を得ることとする」。
 ややこしい記述だな。それはともかく「結果を踏まえて建設が進められるその処理のための施設」というのが、影も形もない通称「第二再処理工場」だ。つまり六ヶ所再処理工場は操業開始どころか、操業終了に至っているということになっていたんだ。
α:竣工もできずにいる六ヶ所再処理工場の運転期間を延ばして受け入れると言い出したといっても、どのみち夢物語に変わりはないよね。
β:8月9日に安全協定が結ばれた時に、立会人も加わった五者間の覚書も結ばれている。「使用済燃料中間貯蔵事業の確実な実施が著しく困難となった場合には、青森県及びむつ市並びにリサイクル燃料貯蔵株式会社、東京電力ホールディングス株式会社及び日本原子力発電株式会社が協議の上、リサイクル燃料貯蔵株式会社は、使用済燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする」と。
そう約束をしたところで、せっぱ詰まった時になって「使用済燃料の施設外への搬出」をといっても現実的じゃない。
γ:経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が6月25日、4ヵ月ぶりに開かれ、エネルギー基本計画改訂に向けた議論が始まった。最初のテーマが、「核燃料サイクルの確立に向けた取組」だったけど、破綻の明らかな核燃料サイクルの確立に固執すべきではないよね。
β:かつて核燃料サイクルの中心に位置していた高速増殖炉は、委員会に資源エネルギー庁が提示した資料からも姿を消していた。
γ:「次世代革新炉の開発・建設」とやらの中に、「高速炉実証炉開発事業」がある。とはいえ実用化の見込みはないってことだろうね。
α:再処理にせよ高速炉にせよ、無駄に税金を注ぎ込むのはいい加減にしてほしいな。

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