連載自由詩 げんしのし30 森川 雅美

げんしのし30

森川 雅美

日没の空の少しずつ暗さの拡がり山の稜線だけうすく、明るさを残す時間だったのかと右足の指から遠くなり、血液の激しく流れ揺れ続ける体内の歪な膨らみの痛く、さらに分散してしまうからもはや考えられない水面へ、拡がる神経の風向きの方へ追われる小さな中庭の疼く、臓器の襞襞まで沁みる黒ずんだ隆起に現れる柔らかな、土壌の亀裂をなぞる先端の日の晒される営みへと脆く、解れていく血管の内に波打つどろどろの溶けた熱量と、日没の空の少しずつ赤らみ端から崩落する首筋の細く、くねる方角に止めどなく隆起する心音を長長と吊るし、なお限りなく揺れ続ける体内の歪な反射だから悲しく、連なる足首に巻きつくぬらぬらの平地からの膿へ縺れ、なお積まれる重みに追われる小さな中庭の泥濘に囁く、陽の傾きを緩く纏う思い出の凪ぐ空の奥底から零れた、体液の亀裂をなぞる先端の反射にまで届く段差の荒く、毛羽立つ終わりのない地層の悪しき夢中に浮かぶ影の、日没の空の少しずつ狂っていく色彩へと放ちより暗く、掠れるうっすらとした火の形に躓く足裏の切傷を含み、掴めない歪な反射だから何度も呼ばわれる地形の丸く、ずれる涙腺の深みへ落下する名残の丘陵を僅かに撓め、静かに歩む足の指先と積まれる重みに水平線の眩しく、知らぬ間に少しずつ崩れる節節まで滲む溶ろけた踝や、暴走する反射にまで届く段差の裂け目となり手を解く、流域の蛇行する思い出せない青空に継ぎ接ぎの空蝉を、

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