フクシマになった故郷福島第1回 東京電力福島第一原子力発電所爆発事故 谷本 多美子 (フロント写真 海水を被ったマキノィから井田川浦尻 著者撮影) 2025.11.27 連載 三月十二日、昨日の出来事は嘘のように空は晴れて気持ちのいい朝だった。早朝友人宅で目を覚ましたところに、私が所属している日本バプテスト連盟青葉キリスト教会の小田牧師から電話をいただく。私の故郷の母や妹を案じての電話だった。八十人もいる教会員の中の一人にすぎない者の出身地のことまで把握していてくださ
連載 故郷福島の復興に想う 第19回――復興か破壊か 谷本 多美子(アイキャッチ画像 無人になった大堀窯元) 2025.02.27 谷本多美子「故郷福島の復興に想う」 2025年を迎えた。昨年は元旦から能登半島地震のニュースが流れ、日本中に衝撃が走った。今年は新年など来なくていいと思っているうちに、容赦なく時間は巡ってきた。さらに1年の2か月が過ぎようとしている。そして間もなく14回目の3.11が巡ってくる。 年が明けてほどなく、芥川賞と直木賞の発表を
マチュピチュの村長になった男~野内与吉 野武 由佳璃 2025.01.30 野武由佳璃 蜂鳥の移り気揺れしハンモック頬寄せる水色の窓春哀し 由佳璃 指先に星が降ってくるような天空の都市がある。世界遺産となったペルー、マチュピチュ。その都市のために生涯を捧げた日本人がいる。 初のマチュピチュ村長になった野内与吉(のうちよきち)である。 福島県安達郡玉井(現大玉)村出身。2
幸福への帰還~大熊町と双葉町を尋ねて 野武 由佳璃(写真はすべて著者による) 2024.10.31 野武由佳璃 観音や石の眼開く蝉時雨面杖(つらづえ)の夢見し浄土西瓜割 大熊の地名に関係する「熊」の付く人名が、南北朝時代の史料にある。浪江町の仲禅寺に伝わる十一面観音像の胎内銘(像に刻まれた文字)に、1343(康永2)年6月6日の日付と、仏像の寄進に関わる人名の「熊女」。室町時代の標葉氏(しねはし)の
糸をつなぐ~13年目の福島被災地を訪問して 森川 雅美 2024.08.22 森川雅美 脱原発社会をめざす文学者の会では、6月11日、12日の2日間久久に福島の被災地を訪問し、私は11日だけ参加した。11日の訪問地は福島第一原発の立地する大熊町(おおくままち)と、隣接する双葉町(ふたばまち)であり、最も復興が遅れている地域だ。大熊町は2022年に特定復興再生拠点区域が避難指示解除さ