山本源一さんとアントニオ・タブッキの想い出 野武由佳璃

 山本さんとの最初お会いした頃の話題は、イタリアの作家アントニオ タブッキではじまった。ちょっぴり変てこな小説で”インド夜想曲””供述によるとペレイラは“ とるに足らない小さな違い”などタイトルもいいセンスでたくさん作品がありなかなかいいのだ。山本さんは読書家でよく読んでいてこれらは不可思議な質感。
 とても面白いものが多く、ありきたりじゃないものに惹かれると彼は語る。
 自分も不条理なストーリーに惹かれて読むのだが、自分で作品を書くまではいかない。
 そんなこんな脱原発を目指す文学者の会に入ったのは確かこの方のお誘いだった。 
 当時は味の素のバイトをしていて文学者でないわたしは入れないと思っていた。
「でもさ、なんか書いたりするよね。」
「あ、詩ぐらいかきますよ。」
「まあ、いいから入っちゃいなよ。」
 ゆえにわたしは作家ではありませんが会員である。 
 当時味の素の仕事をしていたわたしは毎週イベントがあった。そのため着ぐるみのパンダと小さな味の素のボトルを配ったり、着ぐるみのカツオ武士君と出汁のサンプルを配ったり忙しかった。たいていは地方に出ていて、毎日忙しかった。ゆえに文芸家協会での文学サロンへの参加は自分にとって新しい風であった。
 彼からいただく封書にはいつも添え文があり、英語ではpersonal touch (パーソナル タッチ)といった印象の 暖かい、その人らしさが伝わる文章が書かれていた。やはり人柄の良さがうかがえる。
 沢山の作家を育てた方と聞く。
 この上なく尊敬してやまない。さらにキューバ音楽にも詳しく、スペイン語も話す達人である。
「野武さん、文章とは客観だよ。」とよく語っていた。
 この言葉は心に響く。
 山本源一さん、これまでの応援とお気遣いありがとうございます。
 そしてご苦労様でした。¡Muchas gracias por todo! ¡Hasta luego!

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