連載文士刮目第45回 混沌からの旅立ち 何はともあれ〝楽しい日本〟に 伊神権太 (写真 WHO(世界保健機関)からの脱退表明など就任早々から大統領令に次々と署名するトランプ米大統領=NHK総合テレビから)

 2025年も1カ月が過ぎました。
 この間、現職では初の内乱首謀の疑いによる韓国・尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の拘束=韓国の検察は1月25日に拘束の延長を申請。その後、内乱を首謀した罪で起訴=に始まり、新春早々からの山林火災に端を発し限りなき被害をもたらした米国ロサンゼルスの大火災、米バイデン大統領(当時)の日本製鉄によるUSスチールの買収拒否発言、さらにはイスラエルとイスラム組織ハマスによるパレスチナ自治区ガザの停戦合意、一向に集結しそうにないウクライナ・ロシア戦争、阪神淡路大震災の満30年(1995年1月17日午前5時46分発生。マグニチュード7・3。犠牲者は6434人に及んだ)、ことし1月20日からの米トランプ新政権の始動、世界で進む温暖化、愛知県常滑市の養鶏場などで発生した鳥インフルエンザの多発(12か所で144万羽を殺処分)、三菱UFJ銀行女子行員による17億60万円に及んだ大量金塊盗、そして語るにも落ちたタレント中居正広さん(52)の女性との信用トラブルに端を発したフジテレビスポンサー企業の一斉離反、長野市のJR長野駅善光寺口ロータリーでの通り魔による男女3人殺傷とこれに続く岐阜市鷺山路上での通り魔殺人未遂など。目まぐるしい1年の始まりです。

 ところで、ことしは、再生と変化を意味する巳年。それも60年に1度の大化の改新(645年)があった年と同じ乙巳(きのと・み)なのだそうです。そしてこの2つの組み合わせである乙巳には「努力を重ね、物事を安定させていく」といった縁起のよさを表している、そんな前向きな脱皮と再生の巳年なのだというのです。半面で新年早々から歓迎されない事件が国内外で相次いでいる事実も見逃せません。では、そんな世の中にあって明るい話は、あるのでしょうか。いやいや、そこはどっこい。いい話もあります。
 ―というわけで、明るく、健全な話を探してみますと。ありました。次のとおりです。
 ▽プロ野球と米大リーグ通算4367安打を放ち、2019年に引退したイチローさん(51)=本名鈴木一朗、愛知県豊山町出身=、そして▽プロ野球最多の407セーブを挙げた元中日ドラゴンズの岩瀬仁紀さん(50)△元阪神の看板打者掛布雅之さん(69)▽元セ・リーグ審判部長の富沢宏哉さん(93)。この4氏の東京都内の野球殿堂博物館入りが1月16日に発表されたことです。4氏の話題は文句なく、明るい話題ですよね。最近では、これに第74代横綱豊昇龍(立浪部屋)の誕生も加わりました。
 そして、それだけではありません。日本人野手として初めて大リーグに挑戦し、走攻守に数々の偉業を達成した実績が評価され、米大リーグのマリナーズなどで通算3089安打をマークしたイチローさんの場合。史上2人目で野手としては初となる満票の394票にこそ1票足りませんでしたが99・7%の高い得票率で候補者1年目にして米球界最高の栄誉である米国野球殿堂にアジア人として初めて選出されたのです。なんと素晴らしいことなのでしょう。

イチローの米国野球殿堂入りを報じた中日新聞

 明るい話でもうひとつ。忘れてならない話があります。それは何かといえば、です。私も大好きなプロ野球ロッテの佐々木朗希投手(23)が1月17日(日本時間18日)に米大リーグで大谷翔平さん(30)が所属するドジャースへの入団を自身のインスタグラムで発表したという事実です。2011年3月11日の東日本大震災で壊滅的な被害を受け、自らも父と祖父母を亡くした佐々木投手はインスタグラムにドジャースの帽子の写真を投稿。「とても難しい決断でしたが、野球人生を終えて後で振り返ったときに、正しい決断だったと思えるよう頑張ります」ともつづり、多くのプロ野球ファンの共感をえたこともまた事実です。佐々木投手は生まれ故郷である陸前高田市のりんごジュースを交流サイト(SNS)で取り上げ.古里の味を天下に広く紹介してもいる、そんな好青年でもあります。
 というわけで。人生いろいろ。人もそれぞれですよね。石破首相は先の施政方針演説で「かつて国家が主導した「強い日本」、企業が主導した「豊かな日本」に加え、これからは一人一人が主導する【楽しい日本】を目指していきたい、とも述べましたが、その言やよし、です。そんな楽しく、幸せなニッポンになるとよいですね。そして。残るは、そう。われらが中日ドラゴンズ。ドラゴンズのセ・リーグ優勝、そしてニッポンイチの奪取にほかありません。とにもかくにも明るく、笑いがはじけた幸せで楽しい1年になると良いですよね。

(2025/2/7)

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