文士刮目の連載55回目 高市発言に思う。大切にしたい日中友好の絆」(フロント写真 高市政権について論じた東京(中日)新聞の社説【「勇敢」と「無謀」の境界線】)

 東北各地でのクマの大量出没に瀬戸内海での養殖カキの大量死、大分市での170家屋に及んだ大火発生、そして沖縄での突発的な水道管破裂に伴う断水、インフルエンザの拡大、さらには11月7日の衆院予算委員会での中国による台湾周辺の海上封鎖を想定した立憲民主党・岡田克也元外相の質問に対する高市早苗総理の「武力の行使を伴うものであれば、台湾有事が日本の存立危機事態になりうる」との国会答弁に端を発した中国側の猛反発……と、このところの日本を巡る動きを見ていると、わが国は一体全体、何が起きようとしているのか。私たちがどこまでも愛している国土が得体の知れない何者かによって踏み荒らされてしまうような、そんな気がして心配にもなってきます。


 中でも台湾統一を悲願とする中国の怒りは収まらず高市首相の答弁撤回を要求し、経済面での対抗策を出し続ける事態が続いています。一体全体、何が中国政府をこれほどまでに反発させたのでしょう。現に中国側はこの高市発言に薛剣(せつけん)駐大阪中国総領事がX(旧ツイッター)で「汚い首は斬ってやる」などとの暴言を投稿したばかりか、中国政府も「日本は危険だから訪日自粛を」と国民に呼びかける事態にまで発展。過去、多くの先人たちが培った日中友好が急速に冷え込むことが心配されているのです。既にいったん回復したはずの日本の水産物の購入撤回などの事態に発展しています。
 日本は日本で薛剣総領事を外交ルールのウイーン条約に定めた「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に当たるとして召還通告も可能ですが、この先、この問題がどう発展するか、が気がかりなところです。日中国交正常化といえば、1971年(昭和46年)に名古屋で行われた世界卓球選手権に中国が出場。大会終了後に中国がアメリカなど欧米の卓球選手を自国に招待。これがきっかけで日中国交正常化への道を開くきっかけとなったのは、有名な話でその後、ここまで花開いた日中友好の絆を閉ざすほど馬鹿げたこともありません。というわけで、ここは両国国民の長年の友情でせっかく高まった友好の絆を台無しにすることだけは避けなければ。互いに冷静に、と思うのです。

「武力行使を伴うものなら存立危機事態になりうる」と答弁する高市首相

 と同時に、この世の中、何ごとにつけ相手の立場にたって考え先ずは仲直りすることが先決ではないでしょうか。みな同じ運命共同体ともいえる一つの星・地球のなかで生きている同じ地球市民です。実際、中国政府は高市発言を受け「日本は最近、犯罪が多発。治安状態がよくないので渡航は止めるように」と国民に呼びかけ、日本の観光地ではキャンセルが相次いでいるとの報道も伝えられています。あのピンポン外交で育てられた両国の友情が破壊されてよいのでしょうか。
 ニンゲン、いやどの国同士とて互いに憎しみあっていたのではよくありません。早く仲直りをして「平和」を抱きしめて生きていくほど大切なことはありません。「日本は、犯罪が増え治安が悪くなっているので行かないように」など。連日のように、反発をエスカレートさせる中国側の外交姿勢。これではいけません。かえって憎しみの連鎖が高まり、おかしなことになってしまいます、ここは、ひとつ互いに穏便に、といきたいものです。第一、仲良く行き来している両国国民の気持ちにでもなってください。

「日本は言動を撤回すべきだ」と語る中国報道官


 というわけで、このままでは、それこそ戦前回帰という不安な事態になってしまいます。世の中、やはり互いに相手の意見を尊重して仲良くやっていくべきです。そういえば、先日の新聞各紙にトランプ米大統領とマムダニ次期ニューヨーク市長に触れた記事が掲載されていました。犬猿の仲だとされていた2人ですが、トランプ米大統領が先月下旬(11月21日)にニューヨーク市長選で勝利した民主党急進左派のマムダニ次期市長とホワイトハウスで初めて対面で会談。物価高や治安維持対策など共通の話しについて協議。会談後、トランプさんは記者団に「とても生産的だった」と話し「共産主義者だ」とこれまで敵視してきた姿勢を封印し融和を演出。マムダニ氏も「会談では多くの相違点ではなく、物価の引き下げといった共通の目的を重視した」と述べ、トランプ氏に謝意まで示したというのです。

習さんも見習って高市さんとテーブルをはさんで話しあってみたら、いかがでしょう。ニッポンも中国も両国ともが。いや、世界全体が光り輝き出すような。そんな気がします。ニンゲン、誰とてみな、話し合えばわかる。国家同士とて同じです。そんな気がするのですが。
さて今後の日中関係はどうなるのでしょう。ピンポン外交のその後を、大いに期待しようではありませんか。(2025/12/5)

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