げんぱつあくぎょうはなし 第18回 西尾 漠 (アイキャッチ画像撮影=片岡遼平)

α:新潟県知事が柏崎刈羽原発の再稼働を容認してしまったね。
β:11月21日に花角英世はなずみひでよ知事が臨時の記者会見を開いて6・7号機の再稼動容認を表明した。「容認を判断をした上で、職を続けていいかどうかを県議会から信任、もしくは不信任の判断を頂きたい」。
γ:お膳立てをしたのは県議会自民党だ。公明党の議員もふくめて「県知事の結論について県民の意思を確認することに関する決議」を10月21日の定例会最終日に発議、自公と真政にいがたの賛成多数で可決した。「本県議会は、二元代表制の下、県民を代表する立場にある県知事が判断した県民の意思を確認する方法を尊重するとともに、県民の意思を確認する方法として県議会を選択した場合、県知事が出した結論について、同じく県民を代表する立場にある県議会として、真摯に向き合い、熟議のうえ議会の意思を示すことをここに決意する」って、ややこしいね。
α:知事は県議会を選択したってこと?
β:県民投票、県議会、知事選と3つの選択肢があった。県民投票については14万3千人の署名と共に請求された投票条例案が4月18日の県議会で否決されたけれど、新潟日報社が知事記者会見の前におこなった県議アンケートでは、なお13人の県議が県民投票こそが適切と答えている。
γ:知事は本心では知事選で決着を付けたかったんだ、と新潟日報などは決断の裏側を報じていたね。2期目の任期満了日26年6月9日を待たずに容認を表明して辞職、出直し知事選を考えていたんだけど、昨24年1月1日に能登半島地震が起きてすぐにはできなくなり、時機を失した。一方、記者会見で答えていたように「もう長く引っ張れない。エネルギー情勢などを考えると、国の要請からも1年半たった。そろそろ結論をださなきゃいけない」という事情もあった。
β:政府や自民党県議団としても、来春の知事選ではリスクが大きい。落選するようなことがあれば議論が逆戻りだからね。推進派が圧倒的多数の県議会なら確実だ。
α:「信任、もしくは不信任の判断を頂きたい」と言ったって結論は見えている。
γ:22日の新潟日報のコラム「日報抄」が知事会見を評していわく「種を明かさぬ予告編に関心をかき立てられたけれど、公開されてみれば拍子抜けするほど予定調和のストーリーだった。そんな映画を見せられた気になる。第2幕もキャストからして結末が予想できる」。
β:新潟日報の県議アンケートでは、自民党議員のなかにも再稼働の条件は現状で整っていると思わないと答えた議員が2人、判断できないが5人いた。再稼動すべきかについても、再稼動すべきと明言したのは32人中11人。判断できないが6人。未回答その他が15人だった。それでも議決となると「信認」に票を入れるんだろうな。
α:県民意識調査の結果では、「再稼働の条件は現状で整っている」に対して、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせて37%、「どちらかといえばそうは思わない」と「そうは思わない」を合わせて60%、「どのような対策を行ったとしても再稼働すべきでない」という否定に誘導的な問いに対しても、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせて47%、「どちらかといえばそうは思わない」と「そうは思わない」を合わせて51%と拮抗した。30キロ圏内に住む住民の追加調査では、「どのような対策を行ったとしても 再稼働すべきでない」という問いには「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせて43%、「どちらかといえばそうは思わない」と「そうは思わない」を合わせて57%とだいぶ否定寄りになったものの、「再稼働の条件は現状で整っている」に対して、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合わせて39%、「どちらかといえばそうは思わない」と「そうは思わない」を合わせて61%、いう結果だったよ。
β:調査では、東電の安全対策や県の防災対策の文書を配布までした。知事は「安全対策への理解が深まるほど、再稼働に肯定的な傾向が確認できた」と説明していたけど、安全対策の認知度が最も高いグループでも53%、防災対策の認知度が最も高いグループでも58%が再稼働の条件は整っていないと答えている。
γ:知事の会見をライブ配信で見ていたんだ。県民の間では「安全・安心への不安感が圧倒的に大きい」「新潟は豪雪地帯であり、冬季にもしもシビアな事態が起きたら安全に避難できるのかという不安はほかの地域より大きい」「不祥事もあり県民の中に東京電力に対する信頼度がなかなか確立していない」って、再稼働容認の理由とは思えない説明だった。
α:その東京電力は、10月16日の県議会に社長が出席して、1、2号機の廃炉検討や地域振興のため10年程度で計1千億円規模の資金提供をするとの方針を表明した。でも、そんなことで信頼度が確立するわけがない。
β:廃炉の検討は「決定ではなく、あくまで検討に入ること」とも強調している。結論を得るには6号機の再稼働後1年半程度かかると、再稼働が前提だ。「カネをやるから黙れ」にはむしろ反発が大きかった。
α:不祥事・トラブル続きでもあるし、何より福島原発事故の責任逃れに終始している姿勢が許せないよ。13年以上動いていないものが本当に動かせるのかな。
γ:柏崎刈羽原発の運転員の約4割が稼働経験無しだって。原子力規制委員会の山中伸介委員長は12日の記者会見で、「長期停止の間の人材育成や技術力維持については審査の中でも見ているつもりだが、事業者にもその点は注意深く進めてほしい」と注文を付けたそうだけど。
α:知事の容認表明で終わりじゃない。今年度中に再稼動って言われてるけど、何としても止めなくちゃ。

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