文士刮目第20回 新しい年こそ、ウサギさんの確かな目と耳で 果敢に挑もう

 サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会。日本は9位と健闘したが、アルゼンチンが3―3の延長戦から突入したPK戦の末にフランスを撃破。36年ぶり3度目の優勝を果たし主将でエースのメッシはW杯5大会目の出場で悲願の初Vを達成し、世界が熱狂するなど2022年も多くのドラマがありました。この世の中、うれしいことがあれば、悲しく辛く、やるせない話もあります。ところで皆さん、12月21付夕刊と22日付の朝刊各紙を読みましたか。

 そこには【原発60年超規制委了承 福島事故後の制度転換】【原発60年超運転了承 規制委 政府の推進方針追認】といった活字が躍っていたのです。これは東日本大震災の大津波に伴い発生した悪夢、東京電力福島第一原発事故を踏まえて事故発生後、<原則40年><最長60年>に制限されていた運転期間が原発を最大限活用しようとする岸田文雄首相の心変わり、すなわち政策転換を受け、こんごは次世代型原発への建て替えや運転延長をしようというものです。具体的には運転開始60年を超える稼働を可能にする法整備を検討。これまで運転の上限60年を定めた原子炉等規制法の改正案をまとめ、2023年通常国会への提出をめざすというのです。

 これに対して現在は運転開始40年を迎える原発は規制委の適合審査に合格した原発に限り一回だけ最長20年延長できます。しかし、新制度案では運転開始30年を迎える原発は劣化管理の対応を明記する長期施設管理計画の策定が義務付けられ、規制制度上は運転期間に上限がなくなるーといった内容で、60年超でも運転は十分可能になる、というのです。これって、おかしくありません? これまであれほどまでに原発の安全に力を注いできたというのに、です。これでは「これまでの関係者の努力は一体何だったのか」と騙された気がしないでもありません。
 東日本大震災の巨大津波に伴い起きた東電福島第一原発事故。この悲惨極まる事故で、それまでの【原発安全神話】は音をたてて崩れ去りました。あぁ~それなのにです。政府は▽ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー環境の激変、さらには▽脱炭素化の促進を錦の御旗に、ことほどさように原発政策の大転換を図ろうとしているのです。こんな安易な姿勢でよいのか。人間の尊厳に対する倫理が問われます。むろん60年超の運転でも安全が完璧に保たれるというなら、それ以上は言いません。むしろ、そうしてほしいです。でも現実には原発の劣化とほころびは目に見えているではありませんか。

 ほかに岸田政権の閣僚としては辞任デノミの4人目となる秋葉賢也復興相の更迭など、その場しのぎの政権運営が多すぎる気がします。国民に真に信頼される政治は一体どこへ行ったのか。ほかに底なしの錬金術が横行した五輪汚職。旧統一教会をめぐる半ば強制に近い献金問題など。この世の中全体が、それこそ一事が万事、腐りにかかっている。わたくしには、そんな気がしてならないのです。皆さんは、どう思っておいでになるのか。そこが気になるところです。
 この人間社会。ほかに、北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホーム(GA)で、知的障害がある男女が結婚や同居を望んだ場合に不妊処置を促していた問題など。国の姿勢は感心できません。何もかもが、後手後手なのです。こんなことでよいのでしょうか。新しい年の始まりに当たって、私はこの国をよくするためにも何事も先手必勝でいってほしく願うのです。後手の積み重ねでは、この国の〝ほころび〟が広がるばかりです。一時しのぎといえば、平和を破壊する大軍拡に伴う防衛費増大だって同じことです。この国をみんなでよくするためにもウサギさんの目と耳で、慎重かつ果敢にいきたいものです。皆さま、よい年になるよう祈っています。(2023/1/01)

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