2011(平成23)年2月21日、中電は中断していた埋め立て工事を1年3ヵ月ぶりに再開しました。田ノ浦に数百人規模の作業員・警備員を動員して、深夜の強行作業を行い、反対派住民との激しい攻防を始めたのです。 同月23日には、田ノ浦で抗議活動をしていた住民2名が作業員の下敷きになって負傷する、という事件が起こりました。このため中電は作業を一時中断しましたが、さらなる異変が発生しようとしていました。
同年3月11日、東日本大震災・東電福島第一原発事故が起こりました。これにより、これまでの原発諸行政や原発諸施設の運営にはストップがかかったのです。ただし電力行政を完全停止することはできませんし、電力会社の営業停止も許されません。
そこでじっさいには原発を使わないようにして、他の発電技術の方法を活用してやりくりしながら電力需要を満たしていったのです。それと同時に反原発闘争も続けられました。前回はそのあたりのことを書いたわけです。
平成31年こと2019年は、5月1日から令和元年となりました。その2019年6月10日に中電は山口県に対して、上関原発計画中の埋め立て免許の再延長に関し、4度目の申請を出しました。2023年1月までの延長で、県は同月27日、中電に補足説明を要求しています。
原子力規制庁の荻野徹長官は7月11日の就任記者会見で、中電上関原発新設の審査申請について、「申請者から意思表示があれば、対応することになると思う」と述べております。これに対応したのか山口県は、7月26日に埋め立て免許延長を許可しました。この間中電は、海上でのボーリング調査計画も発表しています。中電が建設に意欲的なのに対し、政府はイチエフ事故以来、「現時点では原発の新増設は想定していない」との公式方針を崩していません。
想えば中電は、2009年に上関の原子炉設置許可を経済産業省に申請し、申請は原子力規制委員会に引き継がれましたが、審査はそのまま止まっていたというわけです。その申請時点から数えてもすでに10年、発端からいえば37年が過ぎています。中電が執念深いというか、反対派の運動が粘り強かったというか、ともかくこれだけ長期間の設置未完原発は珍しい所でしようが、重要な出来事がまだ控えているので先を急ぎましょう。
任期満了に伴う上関町の町長選は、2019年9月3日告示・8日投開票となり、推進派は現職の柏原重海氏が出馬しましが、反対派は候補擁立を見送ることにしました。しかし反対派の清水敏保代表は、「運動はこれまで以上に強める」と話しています。
これに対して中電の清水希茂社長は10月31日、「(原発は)将来の安定供給、低炭素社会実現のため重要な電源だ」と強調しました。中電の海上ボーリング調査に関し、地元の自然保護団体「上関の自然を守る会」(山本尚佳共同代表)の9人が11月14日、中電本社を訪れ調査と建設の中止を申し入れております 。
2011(平成23)年2月21日、中電は中断していた埋め立て工事を1年3ヵ月ぶりに再開しました。田ノ浦に数百人規模の作業員・警備員を動員して、深夜の強行作業を行い、反対派住民との激しい攻防を始めたのです。 同月23日には、田ノ浦で抗議活動をしていた住民2名が作業員の下敷きになって負傷する、という事件が起こりました。このため中電は作業を一時中断しましたが、さらなる異変が発生しようとしていました。
同年3月11日、東日本大震災・東電福島第一原発事故が起こりました。これにより、これまでの原発諸行政や原発諸施設の運営にはストップがかかったのです。ただし電力行政を完全停止することはできませんし、電力会社の営業停止も許されません。
そこでじっさいには原発を使わないようにして、他の発電技術の方法を活用してやりくりしながら電力需要を満たしていったのです。それと同時に反原発闘争も続けられました。前回はそのあたりのことを書いたわけです。
平成31年こと2019年は、5月1日から令和1年となりました。その2019年6月10日に中電は山口県に対して、上関原発計画中の埋め立て免許の再延長に関し、4度目の申請を出しました。2023年1月までの延長で、県は同月27日、中電に補足説明を要求しています。
原子力規制庁の荻野徹長官は7月11日の就任記者会見で、中電上関原発新設の審査申請について、「申請者から意思表示があれば、対応することになると思う」と述べております。これに対応したのか山口県は、7月26日に埋め立て免許延長を許可しました。この間中電は、海上でのボーリング調査計画も発表しています。中電が建設に意欲的なのに対し、政府はイチエフ事故以来、「現時点では原発の新増設は想定していない」との公式方針を崩していません。
想えば中電は、2009年に上関の原子炉設置許可を経済産業省に申請し、申請は原子力規制委員会に引き継がれましたが、審査はそのまま止まっていたというわけです。その申請時点から数えてもすでに10年、発端からいえば37年が過ぎています。中電が執念深いというか、反対派の運動が粘り強かったというか、ともかくこれだけ長期間の設置未完原発は珍しい所でしようが、重要な出来事がまだ控えているので先を急ぎましょう。
任期満了に伴う上関町の町長選は、2019年9月3日告示・8日投開票となり、推進派は現職の柏原重海氏が出馬しましが、反対派は候補擁立を見送ることにしました。しかし反対派の清水敏保代表は、「運動はこれまで以上に強める」と話しています。
これに対して中電の清水希茂社長は10月31日、「(原発は)将来の安定供給、低炭素社会実現のため重要な電源だ」と強調しました。中電の海上ボーリング調査に関し、地元の自然保護団体「上関の自然を守る会」(山本尚佳共同代表)の9人が11月14日、中電本社を訪れ調査と建設の中止を申し入れております。
清水中電社長は15日、東京都内の電気事業連合会での記者会見で、「活断層か否かを確かめるため海上ボーリング調査は必要」と強調、温室ガス排出量を80%削減するためには新たな原子力が必要になる、と述べています。その後も清水中電社長は原子力の必要性を強調し、海上ボーリング調査を実施しかけたものの、反対派も実力抗議による中断を繰り返したが、別のところから事態の変化が起こりました。ロシアのウクライナ侵攻です。
これは2014年のロシアによるクリミアの強制編入以来、予測しうるものでしたが、22年2月24日に始まったロシアのウクライナに対する軍事侵入は、容易に終わりそうにありません。
日本の原発が攻撃される可能性もありますから、上関原発計画は未完成のまま封じ込めておいたほうが、安全かもしれませんね。
反対派の中核・祝島は、容易に妥協することなく反対運動を続けるはずですが、少子高齢化という一般的な現象を避けることはできず、ある程度の戦力ダウンは起こっているでしょう。
上関町全体として眺めた場合、こうした状況は原発推進派にも起こっているはずです。
田ノ浦の海面を埋め立てて、137万3千キロワットの原子炉2基を建設し豊かな町を作るという夢は、もうやめた方がよいのではないでしょうか。
平成23年3月のイチフクの核事故後、中電は上関の工事を中断したので、町が受けていた原発財源は先細りとなりました。国からの原発関連交付金は、平成24年度には12億8千6百万円だったのが、近年は約8千万円に激減しています。上関町ではこの40年間に、人口は約7千人から2千4百人へと3分の1に減り、令和2年の国勢調査での高齢化率は56・4%と中国地方の自治体で最高になりました。
町民を分断しての原発騒動40年の結末が、この疲弊した現況なのです。
いつも原発推進派が町長になっていた上関町でも危機感はあり、令和1年度には風力発電による売電事業を始めるなど、原発に頼らない自主財源の確保に力を入れだしました。推進派も反対派も、豊かな郷土を願っているのです。次回は中間貯蔵施設のお話に致しましょう。
それでは皆さん、よい年をお迎え下さい。
反核の幟はためき風光る
工事止み細りゆくなり交付金
しめ縄を舟にかざして波枕
(2024年12月12日)