連載自由詩 げんしのし37 森川 雅美

げんしのし37 森川 雅美

古い悲しみの始まりであるなら佇む場所から踏み外す、
日日の営みに晒され忘却する方向に長く伸びる囁きの、
重なる風音を絡め取る足の先まで零れつづけるために、
数える名前に隆起する指先へ小さく開く土地から先の、
古い悲しみの始まりであるなら血に弱く澱む柔らかな、
陽へ薄ぺらに地に伸びる内臓から奥へ歩行する近在の、
失われた風へゆっくりと留める体温と弱い流れの震え、
崩れる先端に繫がる違う思い出を少しずつ重ねる道の、
古い悲しみの始まりであるなら次次と地層に晒される、
残滓の反射に湧き上がる皮膚の深部に途切れる片側の、
芽生える草と絡まる襞襞の深みへ溜まる沈殿物を開き、
拡散する陰に追われる丘を流れ出る先に這い出す指の、
古い悲しみの始まりであるなら断ち切られいく山並や、
落ちる手頸に拡がる現の底に蔓延る空を総べる佇みの、
消える水辺や弾ける痛みに囁く微かな切目のため絡め、
焼ける平地に生える幾つもの暗い眦を静かに貼る指の、
古い悲しみの始まりであるなら不明になる忘却の疼く、
よろめく方に傾く広がりを撓めなおさら崩れる坂道の、
尽きぬ光沢か漣から伝わる脈拍へと深く沈む影を食み、
沸騰する端に窪む隘路へとさざめく結晶の内側までの、
古い悲しみの始まりであるなら擦り切れる水面下から、
少し浮く空に均衡を失う体の深奥から削られる土壌の、
沸き立つ層で遠くまで霞む眼をゆっくり閉じる静寂へ、
重なる振動に兆す少しずつ確実に分解する滲む神経の、

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