

げんしのし36 森川 雅美
静かに終わりいく風の方角であるなら深奥から尽きる、
道であるのかと崩れていく体の内側へと沈潜する方へ、
幾重にも重なる確かでない記憶を辿りつつ弱まるなら、
ぼろぼろと剥がれる表皮のうすい破片に絡まる刹那を、
掴み損ねる風下に深く淀む汚れた悲しみの腫瘍を漂い、
静かに終わりいく風の方角に振り向く日の光を重ねる、
血管の泡立つ体の内側へと澱む泡立ちの掠れの位置へ、
幾重にも重なる確かでない地形の深い淀みを踏むなら、
尽きない土地の表皮のうすい破片まで孕まれる現身を、
掴み損ねる風下に深く淀むわずかな名残のために暗い、
丘陵へと吹き飛ばされる振り向く日に細細と編まれる、
血管の泡立つどこまでも遠い川の蛇行する平地の奥へ、
数える指先から爛れ続ける地形の深い淀みを繙くなら、
尽きない土地の幾重もの襞を剥し癒えない骨の亀裂を、
抉る欠落に抗うためのわずかな名残のために低く這い、
丘陵へと吹き飛ばされるまだ痛む古傷の深みにはまる、
土踏まずまでぬめぬめする遠くの蛇行する平地の縁へ、
数える指先から爛れ続ける血管の微細な弁に蠢くなら、
繋ぐことのできない幾重もの襞を剥し癒えない日没を、
抉る欠落に抗うための穏やかな波間に許されず彷徨い、
形にならない背中の岩盤にまだ痛む古傷の深みに綴る、
土踏まずまでぬめぬめする風の耳奥の反響する窪みへ、
響く微動を絡めながら血管の微細な弁に蠢く更地なら、
繋ぐことのできない声の霞む方角へと洗われる訪れを、