隔月連載 げんぱつあくぎょうはなし 第7回 西尾 漠 (アイキャッチ画像撮影=片岡遼平)

α:福島事故の汚染水海洋放出が続いている。
β:「問題なし」と放出のたびに繰り返されてるけど、すぐに目に見える影響が出てくるはずもない。出てくるようなら、とんでもない事件だよ。東京電力が発表しているように、汚染度の低いタンクから順に放出してもいる。
γ:『はんげんぱつ新聞』11月号で沿岸漁業応援団の鷲尾圭司さんは「やがては『やばい』というレベルのタンクも処理しなければならなくなります。3年先ぐらいから問題が生じる恐れがある」と言っていた。「役所では2~3年ごとに担当者の異動があることから、やりたくない仕事を延々と続けるとき、自分の担当する期間だけ問題なく過ごせれば良いという気質が育まれています。このため、異動の直前に『やばい』ものを処置して離れるという心配がある」とも。
α:放出中止を求めた裁判も起こされている。中止を訴え続けることと監視を続けることが大事だよ。
β:中止できなければ何十年も続いてしまう。慣れて風化しないようにしなくちゃね。
γ:「続く」つながりでというのもどうかと思うけど、今年中に福井県外の使用済み燃料中間貯蔵施設候補地を確定できないときは40年超運転の高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の運転を停止するという関西電力と福井県との約束をめぐって、また続きの動きがあった。
α:一部の使用済み燃料をフランスに送る計画とか、山口県上関町の上関原発計画地に中国電力と共同で中間貯蔵施設を建設する計画とかがあったっけ。
γ:上関のことについては中国電力の発表ばかりで、なぜか関電は我関せずの姿勢に終始している。何か怪しいなと思っていたら10月10日、「“禁句”の乾式突如呈示」(13日付福井新聞)があったんだ。『エネルギーフォーラム』11月号によれば「原発推進派の県議からも驚きの声が挙がった」そうだ。
β:「発電所構内に乾式貯蔵施設の設置を検討」を含む「使用済燃料対策ロードマップ」だよ。発電所構内と言えば、明らかに県外じゃあない。それでも約束違反じゃないという理屈が、いかにも嘘くさいね。他の電力会社が六ヶ所再処理工場に送るまでの中間貯蔵施設として設けている施設とは違って、2030年頃に県外につくる約束の中間貯蔵施設に搬出するまでの間、貯蔵しておく施設なんだという。
γ:フランスに送る計画発表では『選択』7月号が「詐術」だと書いていたけど、今度の乾式貯蔵施設こそ「詐術」だろう。乾式貯蔵施設への移送で空いた原発内のプールのスペースは使用しないこととするので貯蔵容量は増えないというが、現在の容量では関西電力の甘い試算でも各原発で5~7年で満杯になる。
β:杉本達治知事は13日、そのときは「最終的に運転できなくなるだけ」と述べるにとどめ、関西電力の計画を容認した。すなわちわずか3日で、県民の声を聞くこともなく40年超3原発の運転継続を容認したことになる。
γ:容認を引き出したのは関西電力ではなく、絵図を描いた経済産業省だ。14日付朝日新聞は「原発利用は『責務』 経産省が仲介」と報じた。原子力基本法に、原子力発電活用のために国には「必要な措置を講ずる責務」があると書き込まれた無茶が、ここでも顔を出している。
β:「最終的に運転できなくなるだけ」にならない保証が、2024年度上期に六ヶ所再処理工場が竣工し、26年度から使用済燃料受け入れを開始するという「ロードマップ」の記載だ。でも、それってありえないでしょ。
γ:8月19日付の東奥日報が「再処理工場完工目標に黄信号」という大きな記事を載せていた。「視界不良は続いている。乗り越えなければならない重い課題は、原燃の社内風土にも、工事現場にも根を張っているようだ」って。間もなく赤信号に変わることは確実だね。
β:関西電力の水田仁副社長は10日、「例外」として「国内外の情勢変化、自然災害など、自社の事由に寄らない事情で搬出が滞り、エネルギーの安定供給に貢献できなくなる場合」は空きスペースを使うと逃げ道に言及した。いまのところ六ヶ所再処理工場の遅れは例外に当らないと言ってるようだけど、約束を反故にするのはいつものことだ。
γ:「県外搬出が行程表通り進まなくなったとき、関電は乾式貯蔵に頼る可能性がある。杉本知事は『ノー』と言って、事実上の原発停止を決断できるだろうか」と、14日付福井新聞は疑問を呈していた。「最終的に運転できなくなるだけ」と言いながらあっさり運転継続を認めた知事は、信用されていない。産経新聞ですら10日付の解説記事で「経済的影響の大きい原発停止という事態を回避する苦渋の決断といえるが、原発構内での事実上の中間貯蔵に道をひらく可能性もある」と指摘している。
γ:そもそも「元々の約束だった中間貯蔵施設の県外計画地点は未提示」(14日付福井新聞)なんだから、約束は守られてやしない。「工程表も実効性の不透明さはぬぐえず、先送り感が漂う」と記事は続いていた。
α:「苦渋の選択」じゃすまないよね。

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