まんまろの月や象牙の聴診器~林京子氏と文芸評論家黒古一夫氏の対談DVD作品上映会 野武 由佳璃 2022.12.01 ひんやりとした旧式の聴診器が肌にあたるたび火傷した皮膚が震える。1945年8月9日。被災者の身体に残された傷は記憶する。 長崎に原爆が落とされた日のことを皆は忘れない。さらに被爆することの意味をこの時理解できた人は何人いたであろうか。生きとし生けるものは皆焼かれ苦しみうめく人々の姿がそ
何故、私は戦争小説を書いてきたのか? 森 詠 2022.11.24 一、私の戦争小説 私は、これまでたくさんの「戦争小説」を書いてきた。あるいは、戦争や戦場にまつわる人間の物語やサスペンス、青春冒険小説である。私の小説のテーマは「戦争と人間」である。 なぜ、私は戦争小説を書くようになったのか? その理由の一つは、私が若いころ、中東をはじめとする世界各地の戦
北陸地方の電力事情 天瀬 裕康 2022.08.11 北陸地方といえば、普通は福井・石川・富山・新潟四県の総称ですが、奇妙なことがいろいろあります。福井県は主に北陸電力のエリアですが、前回述べた西の方は関西電力の範囲です。 北陸電力 Hokuriku Electric Power Company は富山市牛島町に本店を置く電力会社で、略称は「北電」
詩 プーチン殿とご一統へ 天瀬 裕康 2022.07.01 プーチン殿とご一統へ 天瀬裕康ロシア軍がウクライナに突如として攻め込んだのは たしか二〇二二年北京冬季オリンピック直後で パラリンピックの直前突然だったので驚きましたが 貴殿たちは言うかもしれませんチェチェン紛争以来 ジョージアやクリミアの先
赤い森と群青の海 谷本 多美子 2022.06.02 五月のゴールデンウィークに三年ぶりに故郷南相馬市に帰った。コロナ禍の中ではあったが、今年は蔓延防止法が出されていなかったので、思い切って出かけて行った。 今回の目的は、故郷に残っている親から相続した山林や畑を息子に伝えておく必要を感じたのと、三年間で故郷南相馬市がどのよ
本土復帰五十年の沖縄でウクライナを思う 森 詠 2022.05.20 五月十五日、沖縄は本土復帰五十年を迎える。その直前の四月、私は三年ぶりに沖縄を訪れていた。半世紀が過ぎ、沖縄はどう変わったのか、自分の目で確かめようと思っての旅だ。それに先立つ、二月二十四日、ロシアによるウクライナ侵攻が開始され、遠く離れた日本にいて、ウクライナの人々の惨状を沖縄戦の惨状に思い合
現場百回の精神に支えられ 2022.02.27 この世は天国にもなれば、一瞬にして地獄にもなる。/いつ、何が起きるか。知れたものでない。ただ、言えるのは、人間は自然に勝つことはできない、という真実だ。/きょう、午後二時四十六分ごろ、三陸沖を震源にマグニチュード8・8の巨大地震が起きた。ちなみにマグニチュード8・8は、明治のころに始まった観測史
震災から10年、見えない希望 2022.02.27 少し前から、もうすぐ東日本大震災から十年とか、復興とかという言葉を頻繁に耳にするようになった。確かに、原発事故被災地から離れたところでは、徐々に復興は進んでいるが、福島第一原子力発電所から十、五キロの地点にあるわが故郷、集落の大部分が荒れ地となり、帰還した四家族も高齢者ばかり、いずれ消滅の危機に
日録 故若松丈太郎さんに 2022.02.27 いつまでも静かに続く山脈のいつまでも静かに鼓動する海原のだれもが受け入れたのではなかったにせよ人の営みであるならば佇む背中は微動もしないで中天を見上げ生きようが下手な生きものらしい積み上げられる悲しみと燃えつづける塔の棺に晒される土地はそれぞれの思いをかかえて重