連載 原発の蔭と影 第29回 中国電力と違法行為 天瀬 裕康

 電気は私達の生活になくてはならない大切なものです。それがトラブル隠しなどの法律に引っ掛かりそうなことをしてくれるのは悲しく残念なことですが、ロシアのウクライナ軍事侵攻(2022年2月24日)とともに起こった燃料の高騰は、大手電力の経営を圧迫し、中国電力(株)(以下、中電と略す)などが値上げの申請をしたのも嬉しくない報道でした。
 その後のニュースでは、中部・関西・九州を除き、沖縄を含めた7社が申請し、中国電力ネットワーク送配電網で電気を運ぶ託送料を4月のから16.2%値上げ。北陸電力が値上げ率45%で最大といいます。とにかく大変です。
 さらに残念な違法行為、カルテルや不正閲覧といった不祥事が、2022年から24年にかけてマスコミを騒がせ、電気代値上げに逆風となり、じっさい中電などは値上げを先送りするのですが、これら不祥事が問題になったのは16年に決められた、電力小売りの全面的な自由化に反するものだったからです。電力の自由化は、東京電力福島第一原発事で電力供給体制のもろさが分かったのを機に、法改正で利用者が電力事業者や料金メニューを自由に選べるよう段階的に進め、16年に電力小売りを全面自由化したのでした。大手電力の送配電部門の法的分離(不完全分離という感じ)が実施されたのは、20年のことでしたが、これでは不十分だったようです。その前後数年間のことをよく調べておきましょう。

 関西電力(関電)と中部電力(中部電)・中国電力(中電)・九州電力(九電)は、18年の秋頃から、オフィスビルや大規模工場向けの「特別高圧電力」や、中小ビルや中規模工場向けの「高圧伝力」の販売に関して、互いに他社の区域での営業を控え、顧客獲得を制限する話をしていたようです。独禁法違反(不当な取引制限)の疑いです。
 22年12月、関電と中部電力、関電と中国電力、関電と九州電力のような2社間カルテルがはっきりしてきました。持ち掛けたのは関電側です。23年4月、大手電力と互いに顧客獲得を制限するカルテルを結んだとして、公正取引委員会(以下、公取委)から課徴金の納付を命じられます。中電は過去最大の約707億円で、これを特別損失として計上します。一方、関西電力には通知がありません。独禁法の課徴金減免制度を利用し、公取委の調査開始前に違反行為を自主申告し処分を免れたようです。
 中電の打撃は甚大でした。信頼失墜で社長・会長が辞任したのです。値上げにも逆風が吹きました。公取委は、業界団体である「電気事業連合会」が不正の温床としていますが、最もタチが悪かったのは、関西電力だったように思われます。
 23年4月28日、中電は公取委の処分に不服で、「見解の相違」として提訴しました。翌29日、大手電力10社の3月期連結決算が出揃ったのを見ますと、中部電と関西電を除く8社(北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、九州、沖縄)が赤字。この中、九州を除く7社が値上げを申請しましたが、国の審査の厳格化で値上げ時期は不透明でした。 同日(29日)中電の赤字は1553億円で無配となりました。
 瀧本社長は記者会見で、一連の不祥事について謝りながらも、「受け入れ難い所がある」と、カルテルの範囲や課徴金の算出についての不満を述べました。カルテルの範囲が中国・関西地方の事業者向け電力販売と、中国地方の官公庁電力入札のすべてとされたのは、正確ではありません。課徴金算出の基になる売上高に、再生可能エネルギーの賦課金が含まれている点も不適当です。こうしたカルテル問題に端を発し、中電は3件の訴訟に対応させられます。まず公取委への処分取り消し訴訟、次いで元役員三人への5992万円の賠償請求訴訟、第3は役員経験者19人の責任を問う株主代表の訴訟です。(23年10月6日(金))
 こうしている間に、大手電力の顧客情報不正閲覧問題が大きく報じられるようになりました。これは、本来なら閲覧できぬはずの新電力の顧客情報が、大手電力の送配電を受け持つ子会社のシステムを使い、見られるようになっていたのです。最初に発覚した関電では、22年の4~12月に4万件の契約内容を閲覧(ここでは盗み見)したそうです。しかも「盗み見」で得た情報を、新電力からの乗り換えを促す営業活動に悪用したケースもあります。
 中電はこの間、22年10~12月に682人が3万3000件の閲覧をしております。
 不正閲覧は23年1~2月に関電と子会社、これに続いて東北電、九電、四電が新聞記事になり、中電は調査期間を22年4月から23年1月までに拡大すると11万件を超え、政府の作業部会は23年3月3日、罰則の強化を求め、送配電会社の分離を提言しました。
 24年5月1日、3月期の連結決算は火力発電に使う燃料価格の下落や電気料金の値上などにより、好転しました。連結決算とは、親会社をはじめ、国内外の子会社や関連会社を含めた企業グル―プを単一の企業とみなし、財政などを連結して決算することです。
 こんな時に再生可能エネルギーに投資するなど、方向を変えるのは如何でしょうか。原発の2号機・3号機に拘らないでも、すべきことはいろいろあるように思えるのです。

<次回は「沖縄の電力事情」に触れ、このシリーズの終りにしたいと考えております>

(2025年3月10日)

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