連載文士刮目 第34回 能登のみなさん「夢と希望をあきらめないで!」 伊神 権太(写真 人の世には日々、新しいニュースがとびこんでくる=2月23日付新聞各紙)

 このところは昨年暮れから、ことし初めにかけ国内外で表面化、発生した事件や各種不祥事のたぐい、さらには元日早々に能登半島で起きた最大震度7に及んだ地震災害など数々の不幸に思いを巡らしています。一体全体、なぜこんなにも多くの不幸が束になって人間社会を襲ってくるのか。そんなことを思うにつけ、悲しさが止まりません。なぜ。なぜなのでしょう。
 具体的には、本欄でも先に触れた自民党派閥の政治資金パーティーを巡る底知れない裏金問題とそれに伴う政治倫理審査会への出席云々。そして新年早々、元日に4mにも及んだ輪島漁港の隆起をはじめ、能登各地での道路の陥没、液状化、7万5000棟にも及んだ家屋倒壊、ほかに停電、断水、集落の孤立などが続発、地震発生後の災害関連死も含め、多くの死者を出した能登半島地震のその後が心配です。ほかに海外では2年前の2月24日、ロシアの軍事侵攻で始まり今なお続くロシア・ウクライナ戦争、これまた出口が見えないまま不幸な戦争が長期に及ぶイスラム組織・ハマスとイスラエルとの戦争、さらには身近な不祥事では名古屋市教委に金品を贈って人事を動かそうとしていた現場教師らから成る教員団体の悪しき慣習……と暗いニュースばかりを思う時、私たちが住む、この星すなわち地球そのものが汚れてしまった、いわば暗黒時代のど真ん中に居るのでは、と。そんな気がしてなりません。

 不条理極まる話は、そればかりではありません。ロシアでは反政府活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が収監先の北極圏の刑務所で死亡、旧ソ連がNATOに対抗すべく開発した猛毒の神経剤「ノビチョク」の使用が疑われています。こんな報道を耳にするにつれ一体全体、この世の中はどうなってしまうのか。人間という生きものたちの心そのものが、どこへ行ってしまうか、が心配です。でも、そうしたなかで明るい話もあるにはあります。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が1月17日午前、国産新型ロケット「H3」の2号機を種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げ、昨年3月の1号機で点火に失敗した2段目エンジンも正常に燃焼し、目標の軌道投入に成功。2月22日の東京株式市場で日経平均株価(225種)が、バブル経済期の1989年末につけた終値で最高値3万8915円87銭を上回り、34年ぶりに史上最高値を更新した-などうれしい話もあります。地方の話題でいえば1250年の歴史を誇る愛知県稲沢市の国府宮はだか祭りへの女性の初参加という快挙もこんごへの夢を育むきっかけになるかもしれません。

 それはそれとして、です。全国に名だたる日本の能登半島が今後、どう復興し、歩んでいくか、が気になるところです。幸い、地盤が突然隆起した輪島港では2月16日から海底の土砂をさらう浚渫工事が始まり、地元漁業関係者らは「復旧への第一歩が始まった」と歓迎、2月6日には輪島市の7つの小中学校の授業が輪島高校の校舎を使って再開。酒造りを一時、見合わせていた珠洲市宝立町の「宗玄酒造」も業務を再開。電源が喪失し、機械で搾ることが出来ないなか、幸い酒米を発酵させた〝もろみ〟が無事だったこともあり、昔ながらの手法で搾っての無ろ過生原酒づくりが始まったといいます。うれしい話が少しづつ届き始めました。
 その能登半島ですが。いまは全国各地の人々から義援金や援助物資、労力奉仕が続々と寄せられ、大いなる励ましになっていることも事実です。わが家でも息子夫婦がボランティア団体を通じ能登にお米を送ってくれました。

 というわけで、全国各地からのそんな善意が相次いで寄せられるなか、1日も早い<日常の復活>が望まれているわけです。私は、わたしで空港のある街・小牧時代からの友でふるさと音楽家で知られる牧すすむさん(琴伝流大正琴弦洲会会主・倉知進さん)とともに能登の人々を励まし、勇気づける歌をーと現在、厳しい寒さの中にあってなお花を咲かせる雪割草の魂をコンセプトとした歌づくりを進めています。毎年、春になると雪の中からたくましい顔を出すあの花々のように、夢と希望をあきらめない。そんなたくましい歌の調べに合わせ、能登路が1日も早く復興への道を突き進むことが出来ればイイナ、と。そう心の中で願っています。(2024/3/1)

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