連載文士刮目第40回 【どこへ行く ニッポン政治】 伊神 権太(写真 宮崎で震度6弱 M7・1の地震発生直後に出された南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」の概略図=NHKテレビのニュース画面から)

 先日8月8日午後4時43分ごろ、日向灘を震源とする宮崎県南部で最大震度6弱の地震が発生。気象庁は午後7時15分に南海トラフ地震が発生する可能性が平常時より高まっている-として初の南海トラフ地震臨時情報【巨大地震注意】を出しました。幸い、この【巨大地震注意】は、8月15日午後5時には解除されましたが、この世の中、いつどこで何が起きるか。知れたものではありません。
 そして、この南海トラフ発生の注意が終わってホッとするまもなく、今度は台風7号の関東甲信・東北地方への接近に伴う線状降水帯発生、茨城県に対する暴風・高波への厳重警戒、さらには、これに続いて長期に及んだノロノロ大型台風10号による線状降水帯を各地にまき散らしながらの列島直撃と日本中至るところで気の休まる暇がありませんでした。というわけで、地球温暖化に端を発した<自然の脅威>の連鎖が、人間社会を「これでもか。これでもか」と苦しみ続けているのです。ということは南海トラフ地震がいつ、どこで起きても決して不思議ではないともいえます。

南海トラフ「巨大地震注意」の範囲=NHKテレビのニュース画面から

 時あたかも日本では先に辞任を表明した岸田文雄首相の後継を選ぶ自民党総裁選の日程が現行の総裁公選規程が設けられた1995年以降では最長の15日間となる「9月12日告示。27日投開票」と決まりました。派閥裏金事件を受けた信頼回復へ論戦の機会を増やすのが狙いで、小林鷹之前経済安定保障担当相(49)をはじめ、5回目の総裁選への挑戦となる石破茂元幹事長(67)、茂木利光幹事長(68)、ほかに河野太郎デジタル相(61)、林芳正官房長官(63)、小泉進二郎元環境相(43)……さらに女性陣では高市早苗内閣府特命担当大臣(63)、上川洋子外務大臣(71)野田聖子元女性活躍担当大臣(64)らが名乗りをあげています。
 というわけで、これまでのような派閥の重しがなくなったこともあってか。「我こそは」と積極的に立候補するのは大歓迎です。でも、逆に候補者乱立により国民の心までが割れてしまわなければよいが。そんな心配もあります。何はともあれ、日本経済と豊かさの再生はむろん、国民1人ひとりを幸せにするには、どうしたらよいかを真剣に論じ合っていただけたらと願うのです。

 自民党総裁への立候補者が10人前後になるのも驚きです。この相次ぐ立候補者に刺激されてか。立憲民主党代表選(9月7日告示、23日投開票)の方も泉健太代表(50)はじめ枝野幸男前代表(60)、野田佳彦元首相(67)ら複数の立候補が報道されています。こうした立候補者の乱立は、私の目には、なんだか現代社会が常軌を逸した乱世にさえ映るのです。「自分さえ、当選すれば」。こうした気持ちがなければよいのですが。猫も杓子も同然の候補者の乱立は私の目には奇異に映って仕方ありません。なぜでしょう。政治家たちは、何を考えているのか。私たち有権者には、その真意が計りかねるのです。

 それはそれとして。この国では今。総裁選や代表戦以前に永遠に避けては通れない重要な超えるべき難題が横たわっています。難題とは東京電力福島第1原発2号機の溶解核燃料(デブリ)取り出しの初日早々からの失敗、そして同じ東電第1原発にたまっている処理水の海洋放出が始まり、8月24日でまる1年がたったという現実です。こちらの方は中国の日本産水産物の全面輸入停止の継続のなか、これまでに6万㌧を放出、周辺海域のモニタリング(監視)で海水などに異常は確認されていないとのことです。今は、このまま無事な放出が進み、中国の輸入再開が始まるのをただただ祈るばかりです。
 というわけで、日本の国はこの先、一体全体どこへ行くのか。新しい自民党総裁、そして立憲民主党代表に課せられた責任と役割は限りなく広く深く、重い。誰が総裁(代表)になろうが、です。そのことだけは忘れないでほしいのです。今こそ、国民の側に立った政治が望まれています。

(2024/9/6)

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