昨年(2022年)の後半には、大きな問題が起こっております。8月に岸田文雄首相が原発活用の検討を指示し、11月には政府が7年ぶりに冬の節電要請を決定しました。
電力の供給余力を示す予備率は、新聞に発表された数字で見ますと、2023年1月は東北と東京が最低で4.1%、中部・北陸・関西・中国・四国・それ以外の本州と四国・九州は5.6%、北海道7.9%、沖縄33.1%です。1月は寒さとともに正月行事で使用量も上がるのでしょう。だが2月も東北と東京が最低で4.9%、それ以外の本州と四国・九州は6.5%でやや回復、北海道が8.1%、
寒気の少ない沖縄は34.4でやはり最高です。
東京は行事用の電力使用が大きいものと思われますが、東北の電気事情はどうでしょうか。
東北地方の電化が本格化するのは戦後の1952(昭和27)年11月、揚水式で東洋一と謳われた福島県大沼郡金山町の沼沢沼発電所が運転開始した頃からです。
東北電力㈱の設立は翌1953年3月、会長は戦後復興期最大の黒幕でダンディーな相貌の白洲次郎、本社は宮城県仙台市青葉区本町一丁目。英語では Tohoku Electric Power Company, Inc. で、略称は東北電。東北6県と新潟県の大部分に電気を供給することになります。
1958年6月には石炭による八戸火力発電所1号機が、翌年10月には仙台火力発電所1号機が運転を開始しました。
仙台市は杜杜の都、学術・文芸の盛んな都市であり、旧制東北帝大の伝統は脈打ち、私も勤務医時代にはしばしば学会発表で出向いたものです。仙台が本社の『河北新報』は地方紙ではありますが、東北地方のブロック紙でもあります。こうしたレベルの高い文化都市にある東北電力ですが、他の電力会社と同じように、原発に手を出すことになります。
この原発に対し、1960年5月に初めて誘致の手を挙げたのは秋田県でしたが合意ならず、やがて福島県の浪江町と宮城県牡鹿郡女川町との誘致合戦になりましたが、浪江町には東京電力、女川町には東北電力が原発を設置することで決着がつきました。
女川原発は三陸海岸南端にある牡鹿半島の中ほどの、太平洋に面した高台にあります。女川町に建屋などの主要な部分があり、敷地の一部は石巻市にも入り込んでいます。1号機の初臨界は
1983年10月で、初送電は同年11月18日です。その後2号機は1995年、3号機は2002年に運転開始、すべて沸騰水型軽水炉(BWR)です。
1998(平成10)年7月、1号機の定期点検中、制御棒2本が引き抜け状になるなど、トラブルはあったものの、2011年3月11日の東日本大震災の時、2号機の熱交換器室が浸水の影響で使えなくなった1系統を除き、非常用電源が正常に稼働しました。施設の位置が高かったので津波の被害から免れたわけで、2018年3月には建設工事が中断している東通原発の共同建設や運営に加わることになり、4月には日本原電東海第2原発の安全対策に必要な資金につき、債務保証などの形で支援することにしました。
今年(2023年)1月25日、女川原発の放射能モニタリングの値には異常を認めていませんが、3・11の福島原発事故以来、廃炉決定の1号機をはじめ、2-3号機も運転停止中です。これが経営を圧迫しているとは電力会社の辯で、来年(2024年)2月に2号機の再稼動を予定していますが、差し迫った問題として2月1日発表の大手電力9社の赤字合計は、1兆円を超えるといい、
これが電気料金値上げへと繋がってくるのです。
本店富山市の北陸電力が2023年4月からの電気料金値上げを発表したのは前年の10月末。ウクライナ危機と脱炭素の流れによるもので、石炭の価格は22年春から4倍になっており、これが経営を圧迫しているのです。同様な理由から東北電力も値上げを申請しました。
それが今年になってから、さらに広がり7社になりました。このうち東北、北陸、中国、四国、沖縄の五電力は四月から、北海道と東京は六月からの値上げを目指しています。
最大の値上げ率は北陸電の45.84%で2蕃目は沖縄の43.81%、3番目は東北電の32.94%、最少は四国電の28.08%でした。ただし多くの家庭が契約する規制料金の値上げには、国の許可が必要です。規制料金とは、2916年4月に実施された電力の小売り自由化以前から、大手電力会社から提供されていた電気料金プランのことです。自由化によるものは自由料金ですが、ほとんどの家庭は規制料金で生活しているはずですから、この値上げは影響が大きく、国は申請を出した会社の経営状況や燃料費などに過大な見積もりがないかなどを審査します。
そこで多少は値上げ幅の圧縮が起こるものと期待されますが、大手電力会社はまたしても不祥事件を起こしました。経産省1月13日の発表によりますと、東北電力の社員が子会社の端末を使い、競合する新電力の顧客情報を不正に閲覧していた由。この子会社は送配電事業を担う東北電力ネットワークですが、他の電力会社でも見付かってきました。いやはや!
エネルギー危機を克服するために原発は必須と政府の詭弁
燃料の高騰ゆえの値上げだと電力会社の辯おぞましく
ウクライナの無惨な戦跡見るたびに反撃能力煽る魔の声
(2023.2.5)