つい最近の2月18日、北朝鮮はピョンヤン近郊から大陸間弾道ミサイル級のミサイルをロフテッド軌道(通常より高い角度で打ち上げるもの)で発射し、北海道渡島大島の西方約200キロのEEZ (排他的経済水域)に落下。20日には2回、短距離弾道ミサイルを発射し、朝鮮中央通信は戦術核攻撃手段だとしています。北海道南西部や青森県は危ないですね。
電気料金の値上げという生活に密着した問題が起こったため、2月は仙台に本社のある東北電力の話にしましたが、今回は1月に取り上げた青森の続きを述べておきましょう。
青森県の六ヶ所村大字尾駮に、核燃料サイクルの商業利用を目的とした日本原燃㈱という会社が設立されたのは、平成4(1992)年7月。JNFL (Japan Nuclear Fuel Limited ) が略称で、原発を持つ大手電力会社9社と、原発が専門の日本原電(2021年12月21日の「会員の原稿」欄に発表」)が大半を出資した非上場企業です。
大手電力というと北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄の10電力会社のことですが、沖縄電力は原発をもっていません。危険だから米軍が作らせなかったのです。その代わりに原電が入ったのですが、その原電自体が沖縄電力を除く大手電力9社と、日本電源(日本電源開発㈱)が出資して作っているのですから複雑に絡んでいます。
この闇の迷路の中で、歴代会長・社長の多くが東京電力の出身であることは注目しておく必要がありそうです。出資した側には、使用済み核燃料(核のゴミ)の処分が念頭にありますが、処分関係は思うように進みません。
関西電力(関電)は福井県にある三つの原発から出た使用済み核燃料を、青森県むつ市の中間貯蔵施設に運んで一時保管することにしていました。国は関電以外も相乗りさせて、むつ市に集約させようとしていました。
中間貯蔵施設は、原発で燃やし終わった使用済み核燃料を再び燃料として使用できるように再処理するまで一時保管する施設で、正式にはリサイクル燃料備蓄センターと言い、東電と日本原電が共同出資する「リサイクル燃料貯蔵」が運営することになっています。2010年に建設を開始し、13年8月に貯蔵容量約3千トンの施設が完成しました。原子力規制委員会が新規制基準の適合性を審査し、18年後半操業開始を目指していましたが、六ヶ所村の再処理工場はトラブル続きで完成の見通しが立っていません。
さりとて六ヶ所村が適していないというわけではなく、下北半島も再処理工場の候補地だったことがありますし、六ヶ所村に決まる前は東通村も候補に挙がっていました。六ヶ所村にある日本原燃の諸施設がうまく動かないのは、この計画自体に無理があるからではないでしょうか。
そこで2017年12月22日、工場完成の目標時期を、従来の2018年度上半期から3年延期すると発表。ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料加工工場も完成時期を3年先送りとしました。他方、「核燃料サイクル事業」を担う日本原燃に対し、大手8社は支援の縮小をしていたことが2018年1月8日に明らかになりました。
しかしそれにしても、なぜこれほどまで青森県に、そして六ヶ所村に、核施設を集めねばならなかったのでしょうか。六ヶ所村を眺めるとウラン濃縮工場、低レベル廃棄物埋設施設、高レベル廃棄物貯蔵施設、使用済み燃料プール、再処理工場などがひしめいています。一か所に集めた方が効率的なのは分かりますが、住民の不安はさらに大きくなるわけです。それなのに、県として反対の意思表示はなかったのでしょうか。
青森県浪岡町生まれで反原発運動家の平野良一と、『反原発新聞』(現『はんげんぱつ新聞』)の編集者だった西尾漠による『核のゴミがなぜ六ヶ所に―原子力発電の生み出すもの』(1996年11月、創史社)によると、<核のゴミは何もかも六ヶ所へ>という状況は、<突出する青森県の原子力推進>の項にある如く、青森県庁だけが国の原子力政策に忠実な県だったからです。
このシリーズの第3回で、元青森県医師会長が2000年の時点において、トーンの高い反原発の意見を吐露していたことが理解できたのですが、原燃は他にも問題を抱えています。
日本原燃は視察者の受け入れ業務を「六ヶ所げんねん企画」という会社に委託しています。このグループ会社のパソコンに不審なファイルが見つかり、昨年の6月から今年の2月19日までに視察を申し込んだ4982人の住所、電話番号、身分証のコピーなどが漏れた可能性が確認されております。漏洩遮断の措置はとったと言いますが、またしても信用がそこなわれました。
いや原燃の存在そのものに、信用できぬものが感じられるのです。
陸奥の海の幸をも壊しいく日本原燃あまたの施設
魔のごとく六ヶ所村に潜み居る東電出自の会長・社長
核のゴミ集めて暗し下北の半島祭の夜が更けそむる
(2023.3.8.)